東雲さんは見事な手捌きでオーダーのパスタを仕上げる。

今日のパスタランチは『秋鮭とキノコのペペロンチーノ』だそうだ。
にんにくの香る美味しそうなパスタを私が並べた皿に盛っていく。

「はい、パスタランチ三つ。お願いします」

東雲さんの声を聞いた紗季と小緑は厨房入って来る。
そして二人は出来立ての料理をお客さんの所へ運んで行った。

お客さんも今日のパスタを見て笑顔を見せている。

東雲さんは休むことなく、パスタを仕上げたフライパンを洗って元の場所に戻した。
そして使ったコンロを使い捨てのおしぼりで磨いていく。

さらに休む暇なく、仕込みに使った料理器具を洗っていた。

これが働くと言うことなのだろうか。
一息つくこともなく、目の前の作業を淡々とこなしていく東雲さんの姿に私は見とれていた。

料理を作って仕込みをして、片付けて洗い物もこなす東雲さんの姿。

私なんてお皿しか並べていないのに。

将来が不安だ。

あと半年で私は働くかもしれないのに。
こんなので良いのだろうか。

・・・・・・・。

いいわけないよね。

でも・・・・。

なんだか『挑戦する』って怖い。

「次、三名様と二名様。あと予約で十二時半から八名様来るから」

その城崎さんの声を聞いた途端、ホールのメンバーがざわつく様子が想像出来た。
城崎さんは馴れない動きをする彼女達に指示すると同時に、カフェらしくコーヒーを入れていた。

そんな最中にもお客さんは次々とやって来る。