時間はランチ開始時間の十二時を回った直後だった。

私達は慌ててこの店の制服である白のワイシャツと黒のスラックスに着替える。
それとサロンと呼ばれる腰に巻くエプロンを身に付ける。

そして着替えている最中にポジションが決まった。

ホールと呼ばれる接客には樹々と紗季と小緑。
それと城崎さん。

料理を作る厨房には東雲さんと橙磨さんと私、桑原茜。

なんで私が厨房なのか。
最初は疑問に思ったが直ぐに私は納得した。

って言うか私、接客なんて無理。
極度の人見知りだし、きっとお客さんの前で喋れないし。

それに料理は得意ではないが、やったことはある。
仕事で帰りの遅い兄に、何度か晩御飯を作ったことがあるし。

まあ、何度か『不味い』と言われたけど。

厨房は広く、家で見るコンロより立派なコンロがいくつもあった。
お玉やボールなどの調理器具が大中小様々な形で見かけた。

同時に『ここで城崎さんはいつも働いているんだ』って思ったら、急に張り詰めた空気に変わった気がした。

私に言い渡された役割は、お皿を並べるだけという簡単な作業だった。
料理人の東雲さんや、焼鳥屋さんの厨房でアルバイトしている橙磨さんが作る料理を盛るための器を並べるだけ。

それだけなのに、緊張と不安で心が潰されそうだった。
やっぱり初めて働くから?

「茜ちゃん、そんな緊張しなくていいよ。リラックス、リラックス」

橙磨さんの優しい声に、思わず涙が出そうになった。
険しい顔してランチメニューを確認する私の姿に、気を使ってくれたのだろう。

誰がどう見ても、震えていると思われるだろうし。
白町カフェのランチメニューは洋食がメインだった。
生パスタ、カレー、ドリア、サンドイッチの四種類から一つメインを選び、サラダとスープが付いてくる。

全てお手軽な値段で、私たち高校生や中学生にも気軽に足を運んでもらえるような金額だ。
あと何より美味しい。

この前ランチ時間に兄と二人で来たことがある。
城崎さんの作る料理に、私は兄との会話することすら忘れて夢中で食べていたっけ。

本当に美味しかったと、今でもよく覚えている。