「さぁ、あと一人。どうする?手伝わないと出禁にするわよ」

たくさんの人に助けられて、嬉しさのあまり笑顔が耐えない城崎さんは嫌らしい目で私を見ている。

同時にその訴えるような目は『早くこっちにおいで』と言っているに、危なく光っているように見えた。
まるで危ない悪質勧誘業者のよう。

城崎さんは毎日仕事で疲れ、姉が倒れたと言うのにも関わらず、過去を引きずる情けない私のために時間を作ってくれる。

気を使われている。

それなのに私は何も返せていない。
『ありがとう』すらまだ言えてない。

・・・・・・・・。

だったらちょっとくらいは私も頑張らないと。
それにみんなも居てくれるし、私一人じゃないと思うし。

ここは勇気を出さなきゃ。

「たぶん私何にも出来ないですけど、力になれるなら、頑張ります」

その私の弱々しい言葉を聞いた城崎さんは、私に抱きついてきた。
煙草の匂いに混ざって、お酒の香りがほんの少しだけ漂った。

もしかして、昨日は飲みながら私と電話をしていたのだろうか。

「よく言った茜ちゃん!あんた成長したね!『他人に興味が無い』って言う茜ちゃんが、誰かのために自分から手伝うなんて。私、嬉しいよ!」

褒めてくれたと、私の心は晴れて気が緩んだ。

でも直後、まるで雷に撃たれたように私の心は土砂降りの雨のように沈んで行く。

「ってか普通に考えたらもう高校三年生の十月。部活していないんだったら、アルバイトの一つや二つはするのが普通なんだと思うけどね」

なんで急に説教に変わっているんだろ?
さっきまで褒められていたのに。

「し、城崎さん。それを言われると、私の人生そのものを否定されている気がするので、その辺で・・・・」

「何言ってるの。それが人生のツケよ。だから進路も就職か進学も決まらずにいるんじゃない?何を今さら」

笑って話す城崎さんから離れようと試みるも、しっかり体を掴まれているので私は逃げる事が出来ない。
的確に私の心の的を狙う城崎さんの言葉に、私はいつの間にか涙が出ていた。

『誰か助けてほしい』と祈っても、事情を知らない小緑以外のみんなは納得するように頷くか、『その通りだね』と言っているように、うっすら笑みを浮かべていた。

「もうやだ」

口に出てしまった私の心の叫びは、みんなの笑い声と共に混ざって消えた。

同時に暖かいそのみんなの声に、改めて『人は誰かに支えられて生きているんだ』と思った。

まあ、私の場合は敵ばっかりだけど・・・・・。