「どうしてですか?」

「多分樹々ちゃんの友人だからだと思うよ。樹々ちゃんが茜ちゃんのことを話すとスッゴく笑顔になるし」

「そ、そうなんですか」

言葉に詰まって、上手く答えられない私。

でも心は凄く嬉しかった。
全然上手く説明できないけど、不思議な気持ち。

『これからも樹々に頼っていいんだ』って思ったからかな?
よく分からない。

私達の話は続く。

「はい、じゃあここで私の話は終わり。今日の茜ちゃんは何していたの?土曜日でしょ?どこか行ったの?」

私は言葉に迷った。
行ったことのない初めての空間や出来事に、どうやって表現をしたらいいのか分からなかった。

でも頑張って答える。
「水族館。えっと、生まれて初めて水族館行きました」

「ほう!こりゃ珍しい。誰と?一人で?」

「そんな寂しいことはしません!」

私は隣の兄の部屋に聞こえそうな程の大声で否定する。
すると電話越しに城崎さんの笑い声が聞こえた。

そして笑い続けるその城崎さんの声に、いつの間にか私は冷静になる。

同時にものすごい恥ずかしさが込み上げてきた。
大声を出して感情を剥き出しにする自分の姿が、本当に可笑しいと思ってしまったから。

だから私は少し悔しさを滲ませて、改めて答える。

「小緑とです。紗季の妹の」

「へぇ、なんか珍しい組合せだね。楽しかった?」

ふと水族館から帰る時の小緑の笑顔を思い出した。
まるで『楽しかった』と言っているような、無邪気な小緑の笑顔。

嘘や演技だとしても、あの笑顔が見れて私も嬉しいと思ってしまった。

「はい楽しかったです。ペンギンショーが面白かったです。可愛かったですし」

「あそこのペンギン凄いらしいね。結構人気だったでしょ?前にテレビにも出たことがあるからね。ちょっと前に姉さんと行ったときに見たことあるけど、あれはすごい!」

城崎さんは続ける。

「んで、その後は?帰ってまたピアノ弾いていたの?」

再び言葉が詰まった。

紗季の家族の事情。
迂闊に話しても良いのだろうか。

「えっと、小緑の家に行きました。小緑の両親も帰ってきたので挨拶を」

嘘は言ってない。
要所を隠しただけだ。

それなのに私は胸が閉まるように苦しく思った。

一方の城崎さんは私の心の中を簡単に読み取る。