みんなで城崎さんのカフェに向かう途中、私『桑原茜(クワハラ アカネ)』は昨夜の紗季との電話の会話を思い出していた。

同時に日付が変わるか前の出来事も思い出す。

昨日の夜中の十一時。
泥を飲んだような浮かない気持ちで、私は電気を消した部屋で横になっていた。

寝ようかなって思っても中々寝付けなかった。
ずっと今日の紗季や小緑の出来事が頭の中から離れない。

そんな中、暗闇の中で青い光が照された。
それは携帯電話から着信を知らせる光。

電話に出ることを忘れるくらいその青い光は綺麗だった。
まるで海中にいるみたいに。今日行った水族館の中みたいで私は見とれてしまった。

だけど、そんな不思議な世界も一瞬で現実世界に戻される。

相手を確認したら城崎さんだった。
私は慌てて電話を手に取る。

「はっはい。茜です」

直後電話の向こうから、城崎さんの笑い声が聞こえてきた。

「ちょっとー茜ちゃん、葵くんに告白する気になった」

「はい?」

その明るく元気溢れそうな城崎さんの声に、私はすぐに思い出した。
『毎日少しだけでも話そう』って、城崎さんと約束したんだった。

ちなみにその約束を破ったら葵に告白。
それだけは嫌だ。

何としても絶対に告白なんてしたくない。

いや、でも本当は嫌ってわけじゃないけど・・・・、今は嫌だ。
現状を変えたいと思うなら『いつかは葵と面と向かって話さないと』って思うけど、まだ踏み込めない自分がいる。

ヘタレな自分がいる。

城崎さんは早速私との会話に移る。

「今日はなんかあった?私は樹々ちゃんと一緒に姉さんの病院に行ってきた。ったくもう、気持ち良さそうに寝ているから叩き起こそうかと思ったわよ。そしたら寝ぼけて、『後五分寝させて』って言うかと思ったのに。ああ見えて、遅刻癖酷かったんだよ」

私はふと新学期が始まって直ぐの出来事を思い出した。

杏子さんは風邪で寝込む樹々の世話をしていた。
今となっては娘となった樹々の汗を、お母さんである杏子さんは何度も拭いていたっけ。

同時に母のいない私はその光景が羨ましい思った。
『お母さんの愛情って、どんなものなんだろう』って。

「そうなんですか。私も杏子さんに会いたいです」

「そう言ってくれると嬉しいわ。言ってなかったと思うけど姉さん、茜ちゃんのことを気に入っていたみたいよ」

何でだろうと考えたが、全く理由は思い当たらない。
私、何かしたのだろうか。