午前十一時半。
最初に私達が向かったのは城崎さんのカフェだった。

先に昼ごはんを食べようと足を運んだ私達。
でも疲れきった城崎さんに『十二時オープンだから後で来て』と言われて追い出された。

きっとお姉さんの緊急事態に疲れているのだろう。
店内の掃除は終わっていないし、営業の準備もまだみたいだし。

仕方なく私達はこの町で唯一時間の潰せるショッピングモールへ向かった。
『また後からカフェに向かったらいいか』と思って、私達はショッピングモールのゲームセンターに辿り着く。

ゲームセンターに着いた途端に小緑の表情が変わる。
そう言えばここにあるゲーム機の殆どの最高得点は小緑が作った記録だっけ。

私の影響で、小緑もゲームが大好きだし。

そしてみんな各自好きなコーナーに移動する。

「あたし、UFOキャッチャーしたい！茜、あんたこういうの得意でしょ？」

樹々ちゃんは無理矢理茜ちゃんの腕を掴みながら、UFOキャッチャーのブースに走って行ってしまった。
本当に樹々ちゃんは茜ちゃんのことが好きだと改めて思う。

小緑は目の色を変えて私の腕を引っ張っていた。

「さきねぇ、いつもの対戦しよ」

対戦か。
別にいいけど・・・・。

「えー。また私と？それより橙磨くんと対戦したら？いつも一緒の相手と戦っても､楽しくないでしょ？」

私がそう言ったら橙磨さんは少しだけ驚いていた。
でもすぐにやる気に満ちた表情に変わった。

「やったことないけど負けないよ。小緑ちゃんが僕とやるかどうかは知らないけど」

「じゃあやる」

待ちきれないのか、小緑はポケットから財布を取り出すとお金ををゲーム機に入れた。
その小緑の様子を見ていた橙磨くんも、優しそうな表情を浮かべると同じようにお金を入れる。

対戦するゲームはゾンビを拳銃で撃ちまくるというシンプルな内容だ。
ゲームセンターの中で小緑が一番大好きなゲーム。