そして表示されたのは、何故だか五十年前の殺人事件だった。
ある家から父親と娘の遺体が見付かった事件。

そしてその二人を殺めてしまった、母親の名前。

犯人の名前は、北川トキ。

どうやらトキさんは五十年前に当時の夫と息子を殺めてしまったようだ。
動機はは夫婦内の喧嘩。

ついカッとなったトキさんは、包丁で夫と娘を殺してしまったらしい。

でも五十年前の事件だ。
なんでそんな事件が今もなってネット上に残っているのか疑問に思ったが、その犯人が私の知っている北村トキさんであるとは限らない。

同姓同名の可能性もあるし。

だから私は殴られる覚悟で親に真実を聞いた。
そしたら、『その通りだ』と言わた。同時に二度とその名前を出すなと殴られた。

その事件を知ってから私は人間不振に落ちてしまった。
理由は大好きだった人の正体は 『殺人犯』だったと知ってしまったから。

同時に私は完全に人を信用することが出来なくなってしまった。
親の言うことなんて、もう論外。

正直言って、私の人間不振は今も続いている。
『勉強を教えて』と助けを求めるクラスメイトの顔は全く覚えていないのが本音。

半年以上同じクラスになるが名前なんて覚えていない。

クラスメイトは茜ちゃんと樹々ちゃんと橙磨くんしか顔も名前も覚えていない。
他の生徒はまるで真っ黒なクレヨンで顔を塗り潰したように、認識することすら私は出来ない。

だから『目の前の問題の答えを求めるクラスメイトは誰なんだ?』と、いつも思わされる。

私が他の生徒に持病の事を話さないのは、私自身が人を信用することが出来ないから。

『もしかしたら私の持病をからかってくる人が居るんじゃないか?』って思ってしまうから。

『他の生徒に頼らなくても、私は一人で生きていける』と意地を張っているから。

そんな馬鹿な私の心の支えは、小緑と親友の存在と、大好きなゲームだけだった。

ゲームは裏切らない。やることさえやれば、必ず終わりが見えてくる。
『どんなクソゲーでも頑張れば、ハッピーエンドはやって来る』って。

敵にやられても、電源を落とせばまたやり直せる。
何度だって『リセット』出来る。

私の人生も『リセット』したかった。
『バットエンド』の選択肢しか残ってない私の人生と言うの罰ゲーム。

希望なんてないよ。

保育士って言う目標を掲げているけど、どうせ途中で体の限界を迎えてリタイアして園児に笑われるだけ。

勉強しかしてこなかった私は、ピアノが上手な茜ちゃんみたいにお金に変えられそうなスキルは持ち合わせてない。

学校の勉強しても、『何の役にもたたない』ってとっくの前に気付いていたのに。
それが今の社会で役立つとは思えないし。

『だったら今から特技の一つや二つくらい作れ』って言うかもしれないけど、私には何が好きなのかも分からない。
そもそもこんな体で何が出来るんだろうか。

何よりそんな時間はもう無い。