ルビコン

だがそれもトキさんと出会って終わりを告げようとした。
『親に囚われない方が、割と色々と学ぶことが多いんじゃないか』って思うようになったから。

売店での出来事を思い出したら、私の考えが変わり始めた。
私はまるで檻の中に閉じ込められた鳥だ。

『一人で生きて行けたら、もっと人生学べるんじゃないか?』って。

『あの青い空に向かって羽ばたいたら、もっと良いところがあるんじゃないか?』って。

だけど私は直ぐに気付いた。

私は一人で羽ばたくことの出来ない身体。
片翼を失っている哀れな鳥みたいなもの。

この身体と付き合う以上、親の言葉はやはり絶対だと思った。
莫大な医療費、体に気を付けた母の作る薄味の弁当。

そして誰も味方のいないような、毎日寂しい表情を浮かべる小緑の存在。
正直言って、今の小緑だけは放っておけない。

だから私はせっかく檻の錠を解く鍵を貰ったのに、その鍵をあっさり無くしてしまった。

同時に気が付いた。
『私は鳥でも、そもそも飛ぶことが出来ないペンギン』だと気付いたように。

だから『また首に鎖を付けられるのか』って思ったら、『人生なんてどうでもいい』と思った。

何が『勉強して良い大学』だ。
何が『いい職業』だ。

何が『人生勝ち組』だ。

『こんな身体に生まれた以上、もうすでに人生の負け組じゃないか』って。

心の底から悔しかった。

それが反抗期真っ盛りの私の中学時代。
毎日生きることに絶望。

親に反抗するようになったのもこの頃から。

そんな絶望に満ちた私に更に追い撃ち。
大好きだったトキさんの正体を知ってしまった。

心を痛めていた私はトキさんに助けを求めようと、北川トキさんの名前をネットで調べてみた。
『トキさんの今住んでいる住所でも出てこないかな』って、軽い気持ちでトキさんの名前を検索した。

・・・・・・・。