「お前、まさか気付いてないとでも言うんじゃないだろうな。俺が中学三年の時に『いじめ』にあっていたこと」

その根岸くん言葉に俺は胸が痛くなった。
もう終わったはずの、昔の出来事が再び脳裏に写されるから。

覚えていない訳がない。
僕や桃花も一緒に戦ったあの一年間。

根岸くんが誰か分からない相手にいじめられていたあの日々のこと。
僕達が中学三年の頃の話だ。
ある日から突然、根岸くんは毎日嫌がらせを受けるようになった。

上履きを隠されたり、ノートや教科書がごみ箱に捨てられていたり。
移動教室から帰ってくると根岸くんの悪口が黒板に書かれていた。

犯人は分からない。
原因も分からない。

分からないからこそクラスのみんなは協力的だった。
根岸くんを助けようと、みんなで犯人を探した。

見た目は中年のおじさんぽい根岸くんだが、中身はいい奴だ。
心の底から優しく、とにかく面白い存在だった。

そして誰もやりたがらない学級委員長に立候補したいい奴だ。
他人が笑顔になるなら自己犠牲を選ぶ、紗季ちゃんみたいな性格の根岸くん。

そんな根岸くんをいじる奴を、クラスのみんなは心の底から許さなかった。
みんないじめの犯人を見つけるために協力して、教室に隠しカメラを仕掛けて犯人を見つけようとした。

でも犯人によってそのカメラは壊されて、また根岸くんは酷いいじめにあった。
まるでそこにカメラがあると知っていたように。
それからは結局何をやっても同じ。
根岸くんを助けようとクラスみんなで知恵を絞ったが、犯人の尻尾を掴むことなかった。

そして僕達は中学の卒業式を迎えてしまった。
結局犯人の正体は分からないまま。

僕と桃花は同じ高校だけど、根岸くんは違う高校に通うことになった。
『また彼はいじめられるんじゃないか？』と僕は不安になったが、高校に入学したら根岸くんへのいじめは無くなったらしい。

根岸くんからその話を聞いて犯人は分からなかったけど､『本当に良かった』と僕も心の底から喜んだ。

なのに・・・・・・・。

今の現状を理解出来ない僕は混乱するだけ。