夜の道を僕と桃花はひたすら走る。
走っても走っても、後ろからは誰かが追いかけてくる。

どうやら足は早いらしい。

だから僕は逃げても同じと言うことに気が付くと、僕は覚悟を決める。

犯人を誘き寄せるように、街灯の下で僕は足を止めた。
震える桃花の前に立ち、小さく構える。

そして、『やっと足を止めやがったな』と言っているように男は笑っていた。
そして導かれるようにゆっくり、街灯の白い光の中へ入ってくる。

そして現れたのは中学の同級生で、僕と桃花の友達だった。
だから僕は驚く。

「根岸くん?」

僕の目の前にいる眼鏡を駆けた少年が、根岸雅也(ネギシ マサヤ)という僕のよく知っている友達の名だ。
彼は小太りであまり背は高くない。

根岸くんと俺は中学一年から友達だ。
中学はずっとクラスも一緒だったし、仲も良かったと思っている。

高校は離れたけど、僕は今でも仲がいいと思っている。

それに桃花もいつも一緒だった。
根岸くんと話す桃花の笑顔を、僕は何度も見てきた。

だからこそ疑った。
マジで意味がわからない。

『何があったんだ』って。

『どうして金属バットなんて振り回して、桃花を襲っているんだ』って。

彼から話を聞かないと。

「ねぇ根岸くん、どうしたの?何があったの?説明してよ!」

「うるさい橙磨!お前に言っても分かるものか」

「だからこそ言ってよ!意味がわからないよ!」

ここは住宅街て周囲には住宅が広がっている。
だから夜に大きな声で叫ぶと『近所迷惑だ』と思うはずなのに、僕にそんな余裕はなかった。

目の前の変わり果てた友人の姿に、整理が追い付かなかった。

目の前の根岸くんは怖い表情で僕らと距離を縮めてくる。

「橙磨!そこをどけ!その女をぶっ殺してやる!」

「ぶっ殺すって、桃花が何をやったんだよ!まずそれを説明しろよ!僕達仲良かったはずでしょ?」

僕の荒々しい声の裏側で、言葉にならない叫びを桃花は続けていた。
小さく震えて俺の服を握っていた。

根岸くんとの間に重たい時間が流れる。
『一体どうしたらいいんだ?』って僕は悩む。

流石に武器持っている相手は戦いたくないし、友達を殴りたくないし嫌だ。

というか周りの家に聞こえる声で話しているのだから、誰か家から出て来て助けに来きてよ。
何で誰も出てこないんだよ?

そんな中、根岸くんは突然僕らの過去について話を始める。