病院西棟三階。
ここは主に脳に支障がある者や、大きな事後を起こして意識の戻らない者が集まる場所だ。
看護師も付きっきりで世話をしてくれる。
だから他の病室より貼り詰めた空気がエレベーターに乗る前から伝わってきた。
その三階のボタンを押す人達は皆、『世界の終わり』のような顔をしている。
でも大切な人がそうなったら、そりゃ辛いよね。
まあ、僕『川島橙磨(カワシマ トウマ)』もその一人なんだけどね・・・・・・。
その大学病院西棟三階の一室に、僕は足を運ぶ。
浮かない表情で何度も訪れた部屋に入る。
部屋の隅のベッドの上には、目を閉じたまま動かない少女がいた。
名前は川島桃花(カワシマ モモカ)。
僕の妹だ。
もう二年近く眠ったまま。
そんな二年間も眠り続ける妹の姿は『もう見飽きた』と言うのが僕の本音だった。
同時に僕の中に寂しさが込み上げてきた。
『いつになったらこいつは起きてくれるんだ?』って、心の中でそんな一言を呟く。
でもそんな絶望に満ちた表情の僕にも、優しく話しかけてくれる人がいる。
「あら橙磨くん。今日は早いね」
若い看護師さんが僕に笑みを見せてくれた。
毎朝桃花の点滴を変えてくれる、いつもの人だった。
僕は適当に言葉を返す。
「まあ、暇ですし。コイツがいない以上、マジでバイトしかする事ないですし」
「またそんなこと言っちゃって。桃花ちゃんもきっといい夢見てるんじゃないのかな?いつもお兄ちゃんが見舞いに来てくれるんだもんね」
そう言った看護師さんは、僕に笑みを見せてくれた。
二年間同じ表情で病室の扉を空ける僕の表情を見て、看護師さんは慰める言葉をずっと考えてくれる。
間違いなく僕に気を使ってくれている。
僕は眠る妹の額に手を当てた。
暖かい温もりのあるその身体に、僕は気が抜くと涙が出そうだった。
同時に僕の今の気持ちが現れる。
『どうして桃花はまだ生きているんだ』って。
『いっそのこと死んでくれれば、早く気持ちを切り替える事が出来るのに』って。
『こんな辛い思いを、二年間も抱え込むことはなかったのに』って、正直思ったりもする・・・・・。
ここは主に脳に支障がある者や、大きな事後を起こして意識の戻らない者が集まる場所だ。
看護師も付きっきりで世話をしてくれる。
だから他の病室より貼り詰めた空気がエレベーターに乗る前から伝わってきた。
その三階のボタンを押す人達は皆、『世界の終わり』のような顔をしている。
でも大切な人がそうなったら、そりゃ辛いよね。
まあ、僕『川島橙磨(カワシマ トウマ)』もその一人なんだけどね・・・・・・。
その大学病院西棟三階の一室に、僕は足を運ぶ。
浮かない表情で何度も訪れた部屋に入る。
部屋の隅のベッドの上には、目を閉じたまま動かない少女がいた。
名前は川島桃花(カワシマ モモカ)。
僕の妹だ。
もう二年近く眠ったまま。
そんな二年間も眠り続ける妹の姿は『もう見飽きた』と言うのが僕の本音だった。
同時に僕の中に寂しさが込み上げてきた。
『いつになったらこいつは起きてくれるんだ?』って、心の中でそんな一言を呟く。
でもそんな絶望に満ちた表情の僕にも、優しく話しかけてくれる人がいる。
「あら橙磨くん。今日は早いね」
若い看護師さんが僕に笑みを見せてくれた。
毎朝桃花の点滴を変えてくれる、いつもの人だった。
僕は適当に言葉を返す。
「まあ、暇ですし。コイツがいない以上、マジでバイトしかする事ないですし」
「またそんなこと言っちゃって。桃花ちゃんもきっといい夢見てるんじゃないのかな?いつもお兄ちゃんが見舞いに来てくれるんだもんね」
そう言った看護師さんは、僕に笑みを見せてくれた。
二年間同じ表情で病室の扉を空ける僕の表情を見て、看護師さんは慰める言葉をずっと考えてくれる。
間違いなく僕に気を使ってくれている。
僕は眠る妹の額に手を当てた。
暖かい温もりのあるその身体に、僕は気が抜くと涙が出そうだった。
同時に僕の今の気持ちが現れる。
『どうして桃花はまだ生きているんだ』って。
『いっそのこと死んでくれれば、早く気持ちを切り替える事が出来るのに』って。
『こんな辛い思いを、二年間も抱え込むことはなかったのに』って、正直思ったりもする・・・・・。