「紗季、アンタ何か企んでるの?」

「ん?」

「いや、何て言うか。私の知っている紗季じゃない気がするから」

「それが私の本質って言ったら、納得してくれる?」

だとしても私は認めたくない。

何でだろう。
樹々のは受け入れらたのに、どうして紗季は受け入れられないんだろう。

やっぱり怖いからだろうか。
どうしてだろ・・・。

「多分、しない」

「どうして?」

「わからない」

きっと紗季はお姉ちゃんとして強がっているだけ。
本当の山村紗季はみんなに優しく振る舞うイイ子ちゃん。

自分の事を次に回しちゃうようなお人好し。
それ以外は偽りの山村紗季だ。

そう信じたい。

そんな紗季は続ける。

「まあ、私も考えがあるからね。いざとなったら、身を投げる覚悟は出来てるつもりだよ」

「ダメだよ」

「そうは言われても、そんな家庭に生まれたんだから。こんな身体で生まれたんだから。変えられないものは変えられない。茜ちゃんの過去のようにね。どうあがいても過去は変えられない」

「でもこれから頑張ったらいいだけじゃん」

何故だか少し間を置いてから答える紗季。

「そうだね。その通りだよ。未来は変えられるからね。一緒に頑張ろう」

基本的にはどんな物事でも、『頑張る』と結果は付いてくる。

でも今の紗季、『頑張っても意味ないんだよ』と言っているような気がした。
最後の声だけは凄く元気がなかった。

でも紗季は自分のペースを乱さない。

「またお願いすることあるかもしれないから、その時はまた手伝ってね。その時は城崎さんのパフェ奢るから」

・・・・・。

ずっと紗季から違和感を感じていた。
彼女の行動や言葉の一つ一つ。

まるで未来が見えているような言葉に。

私が『山村家の問題を解決していない』と思うように、紗季もまた次の問題が見えているかのようなその物言いに。
私は逃げてはいけない気がした。

と言うか、逃げれないよ・・・・。

・・・・・・・・・。