正直言って、何一つ解決出来ていないと思った。
私が帰ればまたふざけた父親に戻るのだろう。

また娘に暴力を振るっているのかもしれない。

だからこそ気になった。
家に着いて部屋に戻ると、私は急いで彼女に電話をした。

ご飯は後でいい。

電話はすぐに繋がった。
私はちょっと怒ったような声で話す。

「さーき」

「ん?何?」

建前を作るのは得意じゃないし、好きじゃない。
だから私はすぐさま本題を話した。

「これが紗季のやりたかったこと?」

少しの間を置いてから紗季は答えた。

「まーそうかな。これは職を失ってでも、黙ってていい事じゃないと思うし。誰かに相談しようとしても、お父さんの政治活動を見て『ありえない』ってみんな口を揃えるし。それに小緑のこれからの人生がかかっているし。親から産まれたのは事実だけど、その親に人生狂わされるなんて、絶対にあってはならないことだと私は思うし」

力強い紗季の声に、私は何も言い返せなかった。
でも私も同意見で先の言葉に納得していた。

紗季は続ける。

「でも茜ちゃんが来てくれて本当に助かった。何とかやっていけそうだし。小緑のことも許してくれたし」

「本当に許してくれたのかな?」

「さあ?『前言撤回』とか言って、またあの子を追い出すかもしれない。でもその時はその時。ちゃんと対策も考えているし」

現実的な答えを返してくれる紗季だが、その言葉に迷いはない。
まるでロボットように、その言葉に感情はこもっていない。

紗季には何が見えているのだろうか・・・・・。

・・・・・・。