「茜って、紗季の友達の?いつからいたの?」

母親の声に、私の中に申し訳なさが込み上げて来る。
きっと親から見たら、とんでもない修羅場を見られたと思ったのだろう。

娘を殴るなんて行動、他人に見られたら最悪だと思うし。

でも紗季は恐らくこれを狙ったのだろう。
両親の無様な姿を私に見せたかったのだろう。

まるで私と言う存在がジョーカーのように。

二人の悪をやっつける最強のカードのように・・・・。

それに実は紗季の両親、凄い仕事をしている。

父親は娘に酷いことを言うが、職業は政治家だ。
国会答弁では見事な発言で一躍有名になった期待の若手政治家だ。

でも娘を見捨てる奴に、国を守ってほしくない。
『お前に何を守れるんだ?』って思うし。

一方の母は子供の将来を考える教育委員会の人間だ。
教育する立場の人間が『娘を殴ることはしつけ』と言い訳しても、病弱な娘を平然と殴るなんて本当にどうかしている。

それに娘を追い出して何が教育だ。
ほんとふざけてる。

そんな立場の人間だから、さっきの自分の行動を他人に見られたら職を失う恐怖もある。

だから急に態度を変えてきた。

私を見て急に笑みを見せる父親。

「おや、君が茜ちゃん?初めましてだね?いつも紗季と仲良くしてくれてありがとう」

その父親の言葉を聞いて、『本当にこの男は最低な人間』だと思った。
きっと自分より立場が上の人間には、ペコペコと頭を下げているのだろう。

そして自分より下だと思う人間は、立ち直れない程人権も地位も跡形もなく踏み潰す人間なんだろう。

そんな奴を目の前に、私は気が済むまで殴りたい。
殴って殴って、自分が何をしたのか思い知らしたい。

でも、それじゃあ何も解決しない。

だから私は心に決めた。

これが紗季のやりたいことだったら、私は何でも協力する。
小緑のためになるなら、自分を捨ててもいい。

紗季には返しきれないほど助けてもらったし、今度は私がそれを小緑に教えたいと思ったから。

って私、また言ってる事が滅茶苦茶だ。

さっきは『このふざけた親に用がある』と思って飛び出したのに。
今は『紗季と小緑のため』だと思っている。

まあでも、『生き残るため』と『仲間を助けるため』なら、どんな手段を使ってもいいのかもしれないね。

だから今度は私は声を上げる。