「バカ言え!無能な子供に付き合っている暇はない。勉強が出来ないのならそれまでだ。将来役に立たない娘なんて、居ない方がマシだ」

そのふざけた父親の言葉聞いて、私も腹が立ってきた。
いつの間にか拳を握り、どうしようもない怒りを噛み殺していた。

小緑は私の隣で今にも泣きそうな表情を浮かべている。
流石に実の親にそんなことを言われたらキツいよね。

でも最低な父親は続ける。

「紗季、世の中はそんなに甘くない。お前も保育士なんて馬鹿げたこと言うが、本当にやっていけるのか?身体が弱いくせに過酷な仕事。お前に出来るのか?」

紗季は頭を床に付けたまま、まるで石のように動かなかった。
どんな表情をしているかはわからないけど、紗季も辛いというのだけは分かった。

助けてあげないといけないのに。

そこから少し重たい沈黙が流れた。
威圧感のある父親の存在のせいか、紗季は言葉を失う。

顔もあげることすら出来なかった。
本当に辛そうな紗季。

「時間の無駄だ。飯にするぞ。紗季、分かったなら顔を上げろ。いつまでそんなみっともない姿を曝しているんだ」

そう言った父親は近くの新聞を手に取った。

一方でその言葉を聞いた母親は、重いため息を吐きながら食卓に料理を運ぶ。
そして最初から何もなかったかのように、両親は会話を終わらせようとする。

でも紗季は諦めない。

「お願いします、小緑を許してください!お父さん!」

「しつこい!おい、この馬鹿を部屋に閉じ込めておけ」

『何度言っても無駄』と言っているような父親の言葉に、母親は再び大きなため息を吐いた。
そして母親は未だに動かない紗季のポニーテールを髪を掴んで強引に紗季を立たせた。

同時に冷たい言葉を紗季に浴びせる。

「アンタさ、自分の立場わかってんの?いいよね、アンタは昔っから呑気な性格で。呑気だから気付かないんでしょ?自分の存在が回りに害を与えているって」

母親はの残酷な言葉と共に紗季を強引に隣の部屋へ連れていこうとする。
てかコイツの人間性もふざけてないかな?

紗季は抵抗する。
でも身体が悪くて運動や喧嘩なんてしたことのないから、意図も簡単に隣の部屋に連れて行かれた。

もう両親の思うままだった。