「だったら私も側にいるから!だから、一緒に帰ろうよ。私が小緑を守るから。絶対に!」

そうだ。
私の事は関係ない。

今は小緑の事に集中するだけ。

小緑が良くなれば、私はどうなってもいい。
なんだってする。

親に怒られるって言うなら、私が全力で小緑を弁護する。
その後も全力で慰める。

それが『誰かを想う』って事だ。
口だけの奴等には絶対になりたくない。

って私が言える台詞じゃないんだけどね。

今は関係ないと思っても、やっぱりブーメランのように心に突き刺さる。

でも直後、小緑の抵抗する力が弱くなっていく。
まるで電池が切れたみたい。

そして無抵抗な小緑は小さな涙を浮かべて私を見つめていた。
私の言葉にようやく耳を傾けてくれたみたい。

「本当、ですか?」

小緑のその言葉に私は頷いて答える。

「当たり前じゃん。友達を見捨てたりなんて、絶対にしたくない。紗季が親友なら、もうアンタも親友だと思っているし」

なんて私らしくない言葉なんだろうと、言って恥ずかしく思った。

でもそれで彼女が納得してくれるなら、それでいい。

小緑は服の袖で涙を拭い、真っ赤な表情で私を見ていた。
私と同じでよく泣くくせに、態度のデカイ奴だ。

まあでも、それが山村小緑の『本性』だったら、私は嬉しいな。

ちなみにこのやり取りの間も、私は扉に挟まる状態が続く。

やがてブザーが鳴り出した。

流石にヤバイ・・・・・。

「ほら、行くよ。大丈夫だって。何かあったら、紗季も私もいる。頼っていいからおいで」

小緑の腕を掴みながら、私はゆっくり前に進んだ。

同時に私の胸の鼓動が小緑に伝わらないか少しだけ不安だった。
強がってはいるが、先の事は何一つ考えていない。

やがて小緑は自分の家の扉に手を掛ける。
紗季お姉ちゃんの言葉を信じて、震えるその小さな手で小緑は我が家の玄関の扉を開ける。