エレベーターの目的地は最上階の二十階。
長いエレベーター内の待ち時間に、小緑は苛立ちと不安が混ざったような表情が浮かべていた。
小緑をここまで無理矢理連れてきた。
『家まで送る』と言っても、小緑が言う通り『家出中だから』という言葉で何度も跳ね返された。
だから私なりに慣れない言葉を使って、なんとかここまで連れてきた。
『紗季は絶対に小緑を見捨てるようなことはしない』とか『紗季は小緑のことしか考えてない』とか。
って言うか、家出しているんだったら家に帰って寝たり、風呂に入ったりしていないつうの。
私と同じで、言っていることと行動が滅茶苦茶だ。
やがて最上階である二十階にエレベーターは辿り着く。
そしてやっぱり小緑は暴れ出す。
「ああ待って、やっぱ嫌。今日親が両方帰っている日だ。僕帰る」
「帰るってどこに?家は目の前でしょ?」
小緑はエレベーターから降りずに、一階のボタンを連打していた。
その呆れた姿に私はため息を一つ吐いた。
「小緑。もう、なにやってるの?」
「うるさいです。親に会いたくないです」
一向ににエレベーターから降りてこない小緑の身体を、私は必死にエレベーターの外へ引きずり出そうと試みた。
同時に私の体は何度もエレベーターの自動ドアにに挟まっては開くなど、管理人さんに見つかったら叱られるような体制になっていた。
これ結構痛い。
だけど、『ここで逃げられたらなんの意味もない』ってことは私も理解している。
小緑を連れてくると、紗季と約束したんだ。
誰かさんと同じで、約束は絶対に守らないと。
じゃないと相手に申し訳ない。
同時に紗季が言っていた『難しい』の意味を理解した。
本当に『言うことの聞かないワガママな妹』だ。
こんな時、何を言ったら小緑は納得してくれるだろうか。
普段使わない頭をフル回転させて、私は言葉を組み立てる。
「アンタねぇ、紗季は心配しているんだよ!いくら親が嫌って言っても、迷惑をかけていい理由にはならない!」
そう言っても結果は変わらない。
それどころか小緑の力が結構強い。
そう言えば『小緑は運動神経がいい』って、紗季は自慢していたっけ。
と言うか、このままでは本当に逃げられる。
小緑は私に抵抗する。
「うるさい!茜さんなんかに僕の気持ちなんて分かるわけないじゃないですか!」
「はぁ?さっき『頼りになります』って言ったじゃんか!嘘だったの?」
「それはそれ。これはこれです」
あーもう。
中学生の言い訳なんかに付き合ってられるか。
「だったら紗季だけ会おうよ。って言うか、逃げてばっかじゃなんの意味もないじゃんか!」
自分で言っておきながら、その言葉はブーメランのように心に突き刺さる。
散々過去から逃げ回って、みんなに迷惑をかけているくせに。
葵や愛藍に自分から会おうとしないくせに。
だが『それはそれ』だ。今は私の事なんて関係ない。
私は続ける。
長いエレベーター内の待ち時間に、小緑は苛立ちと不安が混ざったような表情が浮かべていた。
小緑をここまで無理矢理連れてきた。
『家まで送る』と言っても、小緑が言う通り『家出中だから』という言葉で何度も跳ね返された。
だから私なりに慣れない言葉を使って、なんとかここまで連れてきた。
『紗季は絶対に小緑を見捨てるようなことはしない』とか『紗季は小緑のことしか考えてない』とか。
って言うか、家出しているんだったら家に帰って寝たり、風呂に入ったりしていないつうの。
私と同じで、言っていることと行動が滅茶苦茶だ。
やがて最上階である二十階にエレベーターは辿り着く。
そしてやっぱり小緑は暴れ出す。
「ああ待って、やっぱ嫌。今日親が両方帰っている日だ。僕帰る」
「帰るってどこに?家は目の前でしょ?」
小緑はエレベーターから降りずに、一階のボタンを連打していた。
その呆れた姿に私はため息を一つ吐いた。
「小緑。もう、なにやってるの?」
「うるさいです。親に会いたくないです」
一向ににエレベーターから降りてこない小緑の身体を、私は必死にエレベーターの外へ引きずり出そうと試みた。
同時に私の体は何度もエレベーターの自動ドアにに挟まっては開くなど、管理人さんに見つかったら叱られるような体制になっていた。
これ結構痛い。
だけど、『ここで逃げられたらなんの意味もない』ってことは私も理解している。
小緑を連れてくると、紗季と約束したんだ。
誰かさんと同じで、約束は絶対に守らないと。
じゃないと相手に申し訳ない。
同時に紗季が言っていた『難しい』の意味を理解した。
本当に『言うことの聞かないワガママな妹』だ。
こんな時、何を言ったら小緑は納得してくれるだろうか。
普段使わない頭をフル回転させて、私は言葉を組み立てる。
「アンタねぇ、紗季は心配しているんだよ!いくら親が嫌って言っても、迷惑をかけていい理由にはならない!」
そう言っても結果は変わらない。
それどころか小緑の力が結構強い。
そう言えば『小緑は運動神経がいい』って、紗季は自慢していたっけ。
と言うか、このままでは本当に逃げられる。
小緑は私に抵抗する。
「うるさい!茜さんなんかに僕の気持ちなんて分かるわけないじゃないですか!」
「はぁ?さっき『頼りになります』って言ったじゃんか!嘘だったの?」
「それはそれ。これはこれです」
あーもう。
中学生の言い訳なんかに付き合ってられるか。
「だったら紗季だけ会おうよ。って言うか、逃げてばっかじゃなんの意味もないじゃんか!」
自分で言っておきながら、その言葉はブーメランのように心に突き刺さる。
散々過去から逃げ回って、みんなに迷惑をかけているくせに。
葵や愛藍に自分から会おうとしないくせに。
だが『それはそれ』だ。今は私の事なんて関係ない。
私は続ける。