ルビコン

ペンギンの可愛らしい姿を見て昔の私を思い出していた。
飼育委員だった私は、同じ飼育委員の葵と一緒に小学生の様々な動物に餌を与えていた。

でもそれはもう心の隅に埃が被った古い記憶。

中庭の池で飼う鯉に、その池の隣にある大きな鳥籠の中のインコ。
他にも生徒が拾ってきた子猫に、クラスで買っていた昆虫やメダカ。

それと裏庭で飼っていたウサギ。

あの頃は『動物に興味がない』と言って飼育委員の仕事も疎かにして、まともに餌を与えなかった時もある。
『どうして飼育委員なったんだ?』って思い返しても、記憶が曖昧で私にもわからない。

だけど時を得てまたこうして動物と触れあってみたら、凄く楽しかった。
凄く懐かしかった。

同時に『私って動物が好きなんだ』と思わされた。

きっとあの頃は『楽しいの表現』を知らなかったんだろう。
それに動物といる時間より、葵と愛藍といる時間の方が好きだったし。

無愛想と、葵に言われたことがある。
でも改めて思い返してみたら、それはただ感情の表し方を知らなかっただけ。

でも今なら何となく分かった気がする。
まだ『なんとなく』で完全に自分を表せないけど、少しだけ学んだ。

それもつい最近。
何て言うか、ここ数ヶ月で私の人生が大きく前進した気がする。

そしてそれは、全て私の親友のおかけだ。
人と触れあうことで私の人生が変わった。

誰かと出会うだけで、知らない自分が現れた。
そして本当の自分を知った。

『私、こんなに泣き虫だったかな』って泣く度にいつも思う。
小学生の時も中学生の時も泣いたことがないのに。

ってかその前に泣いたことすら、私は覚えていない。

だからそれを小緑に伝えたい。
伝える『誰か』がいないなら、私がその『誰か』になってあげたい。

小緑が笑うためなら、部外者の私だってなんだってする。
『お節介だ』って、笑われてもいい。

小緑が笑ってくれたら、それでいい。