紗季と話したのは、お昼頃の小緑との電話の後だった。
出掛ける仕度をしながら通話をスピーカーに切り替えて、紗季の声を聞いた。

「茜ちゃん?どうしたの?」

「あ、もしもし。ごめん今何してる?」

「うーん、何もしてないと言えばしてない。どうしたの?」

紗季はそう言うが、何かテレビのような雑音が聞こえる。
きっとまたゲームをしているのだろう。

そんな呑気なやつに、私は助けを求める。

「アンタの妹に脅迫されたから、対処法を教えてほしい」

それが私が紗季に電話をした理由だ。
正直真っ正面から小緑に会いに行くのが怖かった。

『妹が知らない男とキスして、お金をもらっているという現実を知ってしまった紗季の落ち込む姿を見たくない』と思った私だが、『やっぱり自分が一番大事なんだ』と思った。

『小緑に立ち向かう武器が欲しい』と思い、私は紗季の事より自分の事を優先して、紗季に電話を掛けた。

一方の紗季は、冷静に言葉を返していく。

「あぁ、こっちゃんね。なんて?」

こっちゃん。
小緑の事だ。

「今から私と遊ばないと、知らない男とキスしたのを紗季にバラすって」

私の言葉に紗季は大声で笑い出した。

「あはは!茜ちゃん知ってたんだ」

なんで紗季は笑っていられるんだろう。
中学生の妹が危険なことをしているって言うのに。

「紗季こそ知ってるの?」

「うん。こっちゃん気付いていないけど、ヘッドホンに盗聴機つけてあるから」

その親友の言葉に、私の背筋は凍った。
『大人しく真面目な人生を歩んでいる割には、危険な事を考えているだ』って思ったから。

・・・・・・。

って盗聴器?

・・・・・え?