ルビコン

「ご飯、ちゃんと食べてる?」

私の言葉に小緑は首を横に振って否定する。

「昨日も食べてないの?」

小緑は小さく頷いた。
かなり現状が辛いのか、また涙を溢す。

私は続ける。

「勉強は嫌い?」

「嫌い」

「なんで?」

「わからないから」

再度その小緑の言葉を聞いて私は安心した。

だから私は提案する。

「さきねぇが嫌いで勉強を教えて貰いたくなら、私が教えようか?どうせ宿題もやってないんでしょ?」

正直な所あまり他人のお家事情には首を突っ込みたくない。

だが目の前に困っている人がいたら助ける。
そう兄に教わったことがある。

小緑は顔を上げる。

「本当に分からないよ。分からなすぎて怒ったりしない?」

「それは大丈夫。慣れているから」

「はい?」

少し呆れた顔で話す私を見た小緑は、小さく首を傾げた。

きっと『なんのこと?』と思っているだろうが、それは勉強の出来ない私の茶髪の親友のことだ。
あまりにも理解が出来なさ過ぎて、あの紗季が手を焼くほど・・・・。

まあ、あの樹々のバカキャラは全部演技だと知ったけど。
本当の樹々は頭良いらしいし。

それに中学生の勉強なんて、今の私には楽勝だと思いたい・・・。

そんなこと思った私は、最後の質問を小緑に問い掛ける。
「じゃあ紗季のことは嫌い?」

「嫌い」

「本当に?」

「本当」

「期待してるんじゃないの?『さきねぇなら助けてくれる』って」

「そんなことない!」

・・・・・。

ホントかな?