「調子に乗らないで！言っても『良いこと』と『悪いこと』の違いは分からないの？」

「『そんなことを平気で言ってしまうくらい精神が追い込まれている』って捉えられないですか？」

私はすぐに手を離した。
小緑の言葉に納得した訳ではない。

『死ね』なんて言葉を絶対に使ってはいけないのは、杏子さんを想う樹々の辛そうな表情を見たら分かる。

だけど、小緑も涙が出るほど追い込まれているのは事実なんだろう。

小緑はさらに訴える。

「どうして僕の存在を認めてくれないのさ。本当に分からないのに、何でそんなこと言われなきゃ駄目なのさ！」

それが小緑の心の声だった。
彼女の目からは大粒の涙が溢れている。

その小緑の姿を見た私は可哀想だと思った。
とても嘘付いているように見えないし。

何より昔の私と同じ目をしているし。
私でよければ小緑の力になりたいし。

でもその前に小緑に聞きたいことが一つある。
小緑を助けたい気持ちが私の中にあるが、どうしても小緑の許せない行動がひとつある。

「どうして体売るようなことしているの？お金？」

小緑は服の袖で涙を拭き取ると答える。

「誤解しないでください。あれは自分が生きるためにやっているだけです。生活費ないと死んじゃうでしょ？中学生が知らない人からお金を貰う方法なんて、それしかないし。本当はそんなことしたくないのに・・・・」

生活費とは具体的になんのことかと思ったが、理解するのに然程時間はかからなかった。

「まさか家出しているの？」

冗談だと思った私の言葉に小緑は小さく頷いた。
そして小緑の目の下は赤く染まり、再び小さな涙が落ちていった。

小緑が体を売っているような行為をしている理由。

それは家出をしているから。
自分が望まない行動でお金を貰い、それで自分の生活を維持。

と言うか、中学一年生の行動じゃないよ。
小緑の親は何を考えているんだろう。

娘が体を売っているような行為をしているって知っているのだろうか？
知らなかったクズ野郎だよ。

そんな小緑を心配して、私は何個か質問をしてみる。