授業が開始するチャイムが鳴っても、私たちは黙り続けた。

静まり返る空間の中、校長先生が身に付けている腕時計の針の音だけが響く。

それと他の音は何も聞こえないが、微かに私の心臓が鼓動する音が聞こえる。
それはとても早い。

正直、黙秘を続けたらどうにかなると思っていた。
学校側は諦めて逃れられると思っていた。

でも私達が相手にしているのは、校長先生と黒沼先生。
もう私たちが何かやったということは分かっているんだろう。

分かっているからこそ、黒沼先生に隙を突かれた。

「桑原ァ!江島ァ!お前ら何か食わせたんだろ!?大人舐めてんじゃねぇぞ!」

「黒沼先生!静かにしなさい!」

黒沼先生は机を叩くと共に、威圧感のある言葉を吐く。
そして私と葵は顔面蒼白。

その黒沼先生を止めようとする校長先生の声すら、私と葵には聞こえていなかった。

追い込まれる私はどうしようと考える。
だが脅えて答えなんて出てこないのが現状。

だからこそ私は深く考えた。
この場から逃げたくて、現実から逃げたくて、私はありもしないことを考え始めた。

それは嘘という言葉だ。
『知らない人がウサギ小屋にいた』と言えば、私と葵は逃げれるだろうか。

だから勇気を出して『逃げるために嘘を付こう』と決意した時、震えた声が隣から聞こえた。

とても信じたくない、夢の中の言葉であってほしい葵の言葉・・・・・・。