「二人には大変悲しいお話なんですが、我が校で飼育しているウサギが亡くなっているのを確認しました。朝方、我が校の教員が見つけました」

私と葵はいつの間にか唖然としていた。ただその現実が信じられずに言葉を失っていた。

校長先生は続ける・・・・・。

「どうして亡くなったのか、正直分かりません。ですので、昨日当番だった二人にお伺いしたいのです。昨日ウサギに何か変わった様子はありましたでしょうか?」

私と葵はお互い顔を合わせる。
自分の顔までは分からないが、私も恐らく同じ表情をしていたのだろう。

葵と同じ、焦ったような表情を・・・・・。

私は昨日の出来事を思い出す。
でも真実を伝えても良いのだろうか。

確かに昨日、私達は変わった餌を与えた、

今までウサギの餌のペレットを補充していただけだが昨日は違う。
ペレットは全く減っていなかったため、葵が拾ってきた白い花を食べさせた。

その事を正直に言えば問題はない。

しかし飼育委員の決まりでは、『学校が用意した餌以外は食べさせてはならない』というルールがある。

『ウサギが人参が好きだ』と言って、勝手に自分の家から持ってきた人参を食べさせても駄目だ。

そのルール違反をした先の事は私と葵は知らない。
怒られるだけだと思うけど、ウサギが死んで私達が一つの命を奪ったと思ってしまったら、素直に言えるわけがない。

だけど相手は大人だ。
小学生の考えている事なんて、表情を見れば分かるだろう。

強張った私や葵の表情を見れば一目瞭然。

「何かあったんだろ?正直に言え。みんな授業を待ってるんだ。あいつらの時間をお前らが潰しているってことになっているんだぞ」

まるで、何かもお見通しと言っていそうな黒沼先生。

だが隣で校長先生は私達を庇ってくれる。

「黒沼先生、言葉を考えなさい」

校長先生に注意された黒沼先生は舌打ちと共に腕を組んだ。
なんだか子供みたいな先生。

「何でもいいです。心当たりあることは教えてくれませんか?」

校長先生がそう言っても、過去も現実も変えられない。

現にウサギが死んだ以上、その責は私と葵にあるのかもしれないし。
殺意のない犯行だとしても、自分が犯人だと分かっていれば自首なんて真似はしない。

だから私と葵は黙秘を続ける。

何秒も、何分も・・・・・。