もうシロさんのカフェに行くのは辞めよう。
これ以上シロさんを苦しめたくない。

あと茜と関わるのも、もう辞めよう。
大好きな彼女にまで被害が行ってしまったら、本当に自殺してしまいそうだ。

茜は茜で幸せになってもらいたい。

「樹々ちゃん」

もちろん紗季や橙磨さんも。
紗季は身体を大切にしてほしいし、橙磨さんの身に何かあってからじゃ遅い。

「樹々ちゃん、聞いてますか?」

あっそうだ。
明日から働こう。

そうすればお姉ちゃんにも迷惑かけなくて済む。
喧嘩してでもいいから、帰ったらお姉ちゃんに話そう。

『あたしは学校辞めて、明日から働く』って、しっかりそう伝えないと。
またお姉ちゃんが酷い目に会うかもしれない。

「樹々ちゃん?」

あたしと関わる人は全員縁を切ろう。
家族や親友に恩人。

そして知らない街で、知らない人に囲まれて暮らそう。
そうすれば『生きている』ということを実感できる気がする。

なんだかんだ、せっかくここまで生きてきたのに『死ぬ』のはちょっと違う気がする。

「松川さん?おかしいですね、聞こえてますか?」

もう誰にも頼らず今度は一人で生きていこう。
そうすればみんな幸せに生きることが出来る。

「松川樹々さん、聞こえてますか?」

その東雲さんの声を聞くのも、今日で最後だ。

「はい!あっごめんなさい。考え事していて」

慌てて東雲さんのいる方へ振り向く。
東雲さんが何度も呼び掛けていたのにあたしに反応がなかったから、困った表情を浮かべている。

だけどあたしの表情を見た東雲さんは何故か笑った。

そして、『みんなは松川樹々の側にいるよ』と、この人は教えてくれる・・・・・。