いや、何を言っているんだ。

あたしは杏子さんと話していた時、『泣いていた時間があるなら、笑った方が絶対に楽しいのに』って思ったはずだ。
それなのに、どうして泣いているんだ。

松川樹々。
威勢のいいのは口だけか?

こう言う時に笑わないと、きっと杏子さんにも怒られる。
お姉ちゃんだったら瑞季と向日葵を励まさないと。

本当に情けない・・・・・。

だけど無理に笑おうとするも、それが辛くて。
また泣きそうになってしまった。

本当に馬鹿だあたしは。
結局、あの頃から何にも変わっていない。

でもそんな馬鹿なあたしを東雲さんは慰めてくれる。

「そんなに自分を責めないでください。逆に樹々ちゃんがいてくれて、本当に助かりました。迅速に助けを呼べたのも、樹々ちゃんのお陰です。それに杏子さんを『お母さん』と言ってくれたら、すぐに僕に連絡が来ました」

そんなことはない。

それに杏子さんは言っていた。
『この家族旅行は、あたしを受け入れるための家族旅行だ』って。

あたしさえ消えて居なくなっていたら、こんなことにはならなかった。
やっぱり小学生の時のいじめの悪者は、あたしだった。

まるであたしと関わった人間を不幸に陥れようとする悪魔のような存在。

だからその悪魔を退治するために、小学生のクラスメイトだった生徒は悪魔のあたしを退治した。

息が出来なるほど追い込もうとした。

いや、もうそれはいじめではない。
正義だ。

クラスメイトは悪を退治するヒーローだ。
彼らの行動に、間違いはない。

やっぱり思う。
『どうしてお父さんはあたしを殺してくれなかったんだろう』って。

それがあたしの生きる、今の唯一の心残りだ。

だからやっぱりこの人達と一緒に居てはならない。

あたしは人を不幸にする悪魔だ。
あたしがいるから自分の家族を破滅に追い込み、手を差し出してくれた杏子さんも倒れた。

次は誰が被害者になるかわからない。

・・・・・・・・・。