帰りの車は誰も喋ろうとしなかった。
みんな目の下を赤く染めて、流れるような高速道路の外灯を見つめていた。

オレンジに光ったり白く光ったり。
時々消えていたり。

夜の星はとても綺麗だった。
まるでプラネタリウムを見ているように輝く無数の星達。

だけど今はその綺麗な星達も、あたし達の心の痛めるだけだ。

きっと杏子さんなら『星が綺麗だから見てみなさい』って、寝ているあたし達を起こしてでも見せつけて来るだろうと思ったから。

その杏子さんは、助手席にはいない。
ポッかりと空いた空席を見たあたしは、また泣き出してしまいそうだった。

トイレ休憩のため一度パーキングエリアに寄った。
再び車に乗り込むと、あたしはその助手席に座った。

東雲さんの指名だ。
『ちょっとお話をしましょう』って、優しい笑顔を見せてくれた。

パーキングエリアで晩ご飯の弁当を買って食べながら話した。

そう言えば晩ご飯は何も食べていなかった。
あんなに楽しみにしていたのに、空腹という言葉すら忘れていた。

だけど今は食欲がないのも事実だった。
みんなは殆ど食べずに残していた。

あたしも同じ。
お腹は空いているけど、どうも箸が進まない。

東雲さんは運転ということか軽食だった。
サンドイッチを素早く食べ終えると、運転すると同時にあたしに語りかけていた。

優しいお父さんのようにあたしに接してくれる。

「樹々ちゃん。今日は楽しかったですか?」

いつもと変わらない東雲さんの声に、なんて答えたらいいのかわからなかった。
でもそれじゃあダメだと気が付いたあたしは、無理矢理表情を作って答えた。

「えっと、はい。初めてのジェットコースター、楽しかったです」

「他には何かありますか?」

その東雲さんの言葉に、あたしは今日の消えかけた記憶を掘り返した。
まるで色褪せた白黒写真のような記憶をあたしは一つ一つ思い出していた。

「あと、パレードとか。あとお昼御飯も美味しかったですし、杏子さんにいっぱい服を買って貰いました」

「そうですか。楽しんで貰えたら、僕も嬉しいです」

そう言って東雲さんは一瞬だけこちらを向いて笑った。

と言うか、どうしてそんな表情を続けられるのだろうか。
なんでこんな状況でも笑顔なんだろう。

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