「今日は帰りましょう。明日は月曜日です。早く帰って、明日に備えましょう」

東雲さんの冷静な言葉に、あたしは携帯電話で時間を確認する。

時刻は八時を回っていた。
今からここを出て、家につく頃には十時を回っているだろう。

それに東雲さんの言葉通り、明日は学校だ。
もうすぐ企業の面接がある。

そんな時期に簡単に学校を休む訳にはいなかない。

泣き叫ぶみんなを慰めるように引き連れて、東雲さんはいつもの笑顔を看護婦に見せた。

本当は東雲さんが一番辛いはずだ。
最愛の妻の緊急事態に泣くことも許されず、我が子のために笑顔を振舞い慰めてくれる。

それが父親の役割と言うものなのだろうか。
だとしたら、それは非常に残酷だとあたしは思った。