「それに、もうあなた達が苦しむ姿を見たくないの」

その時、昔のお姉ちゃんが言っていた言葉を思い出した。

あたし達、誰も引き取ってくれないんだって。
『お前らみたいな気味の悪い奴ら、母親と一緒に首を吊って死ねばいいのに』ってさ。

その言葉をお姉ちゃんに言ったのは、あたしの叔母に当たる人だった。
母の唯一の家族の姉で、あたし達を引き取ってくれる唯一の希望だったのに。

その希望は跡形もなく絶望に変わってしまったことをあたしは思い出していた。

ところがこの人達はどうだろうか。
この人達はあたしとどの様な繋がりがあるのだろうか。

それだけは彼女達と出会って三年間、あたしの中の最大の疑問だった。

普通ありえない。

どうしてこんなあたしなんかのために身を削るような事をいつもしてくれるのか。
身内でも親族でも関わりが無かったからこそ、あたしは理解できなかった。

・・・・・・。

・・・・・結果がこれですか?

「だから、泣きたい時は私の胸の中で泣きなさい。寂しくなったら瑞季や向日葵と遊んで、寂しさを紛らわせなさい。そしてお腹が空いたら、遠慮なく東雲さんの料理をおかわりしなさい。そして楽しかったことはみんなで共有しましょ。だって、家族なんだから」

一方的な杏子さんの言葉に、あたしの視界がぼんやりしていた。
無意識に鼻を啜った。

そして耐えても耐えても溢れ落ちてしまう自分の涙を見て、あたしは泣き叫んだ。

小学生の時、仕事で疲れきった母の姿を見て飛び付いたあの頃と同じように。
まるで本当のお母さんのように。

あたしは杏子さんに飛び付いた。

「ちょっと、もう」

杏子さんはあたしの頭を撫でてくれた。
泣き叫ぶあたしに語りかけるように何かを言ってくれたが、あたしの泣き叫ぶ声で全てが書き消された。

何も聞こえなかった。
その時、隣の噴水の水が綺麗に弾けた。

赤、橙、黄、緑、藍、青、紫。
その七色の光が、近くにいたあたし達まで照らしてくれた。
まるで『頑張れ』と囁く『小さな妖精』のようにも見えた気がした。

そしてその『頑張れ』の勇気をもらったあたしは杏子さんに問い掛ける。