なんだろう、この思わず叫びたくなるようなこの感情。
頭は激しく揺れるが、それもまた楽しい。視界も時々反転していた。

初めての光景に、興奮と感動が止まらなかった。

だからあたしは今日初めて『心の底から楽しい』と思って笑った。
そしてこの楽しさを、誰かと共有したいと思った。

例えば・・・・隣の瑞季とか。

「瑞季!どう?楽しい?」

風が強くてあまりまともに目を開けることは出来なかったが、あたしは隣に座る瑞希の表情を確認。

その顔はどこか泣きそうな、ただ下を向く可愛そうな姿にも見えた。

同時に出発する前に瑞季の手が震えていたのを思い出した。
間違いなく瑞季は恐かったのだろう。

無理矢理こんな場所に連れてかれて、心の底では泣き叫びたかったのだろう。

だから今だに震える瑞季の手に、あたしは手を伸ばした。

そして風に書き消されないように、後ろの杏子さん達にも聞こえるように、大きな声で瑞季に話しかけた。

「瑞季!あたし、めちゃくちゃ楽しいよ!」

あたしがそう言えば、瑞季はは元気になってくれるだろうか。
気を取り戻してくれるだろうか。

せっかく手入れしたあたしの髪ももうグシャグシャなんだろう。
終わったらあたし、どんな髪型になっているのだろうか。

でも最後に瑞季が笑ってくれれば、あたしはそれでいい。
あたしも最後は瑞季と一緒に、笑いたいから。

あたしは瑞季の手を離さなかった。
小さな震動が伝わるその手を『絶対に離さない』って誓いながら。

あたしやみんなの叫び声は雲一つない青空に消えていった。