クラスの集合写真には、少し大きめの制服を見に纏う少年少女の姿が綺麗なピンク色の桜と共に写っていた。

その最後列には瑞季の姿もある。
『なんでセーラー服じゃなくて学ランなんだ?』と、あたしは疑問を抱く。

「瑞季くんどの子よ」

何か悪いことを企むような笑みを浮かべてシロさんはそう言っていた。
瑞季もそれに答えるように、一人の女の子を指差した。

その子は入学式早々から長い髪の毛を明るく染めた、やんちゃそうな女の子だった。
だけどどこか寂しそうな表情にも見えるのは気のせいだろうか。

まるでどこか心の傷を負ったような、昔のあたしの表情に似ている。

と言うよりこの子、髪型や髪色は違うがあたしの親友の山村紗季にそっくりだ。
まるでグレた紗季がいるみたい。

そんな女の子を見たシロさんは呟く。

「あれこの子・・・・、確かこの前どこかで見たような」

シロさんのその言葉で、あたしはこの前の夏祭りの出来事を思い出した。
同時にあたしは紗季によく似た人物と会っていたことを思い出す。

「この子、確か小緑ちゃん・・・・でしたよね」

余計な事を言ってしまったのか、そのあたしの一言で再び瑞季は真っ赤な表情を本で隠した。

どうやら当たったらしい・・・・・。

「樹々ちゃん、知ってるの?」

杏子さんの言葉にあたしは頷いた。

「あたしの友人の妹です。確かにすごい可愛かったのはあたしも覚えています。ほら、シロさんとも会っていますよ。この前の夏祭りで」

「ああ・・・・、あの子だったんだ。紗季ちゃんと一緒にいた。でもなんで髪切っちゃったんだろうね」

そのシロさんの言葉に、あたしは違和感の正体に気が付いた。

あたしが見た『山村小緑(ヤマムラ コノリ)』は、小さな顔に大きな瞳の女の子だった。
明るく染めたショートヘアの髪型は、何処か少年にも見えるような大人っぽい雰囲気にも見えた。

でも写真に写る彼女は今のショートヘアではなく、腰までありそうな長い髪。
似合っているのになんだか『勿体無い』と思うあたしがいた。

何かあったんだろうか?

「好きだったら告白しないと。瑞季も男になるチャンスだよ」

お酒を片手に杏子さんは息子を茶化すようにそう言った。
不器用な息子をからかうように、ただちょっと意地悪な言葉を言っただけなのに・・・・・。

・・・・・・・。

それはなんの前触れもなく、突然だった。