「いいじゃないの、プレゼントくらい早く渡しても。逆にダメな理由ってなんなの?」

『バカバカしい質問』だと思った。
だけどいざ答えるとなると言葉に詰まる。

『バカバカしい質問』だからだろうか?
それともあたし自身が『バカバカしい考え』なのだろうか?

あたしは曖昧に答える。

「えっと、誕生日プレゼントは誕生日に貰わないと、誕生日プレゼントじゃない・・・・・と思うからです」

「誰が決めたの?そんなこと」

意地悪な杏子さん言葉に、あたしは思わず目をそらしてしまった。
シロさんが言う通り、杏子さんは性悪女だ。

そんな性悪女の杏子さんはあたしを見て微笑む。

「いいの。貰えるときは貰いなさい。大人になったらもっと辛いだから。子供の内は楽しく言われた通りに生きていればいいの。じゃないと、後悔するわよ」

その杏子さんの言葉は、桔梗お姉ちゃんの言葉に似ていた気がした。
この前も言われたし。

『今が楽しいんだったら、遊んでいればいいの!これはお姉ちゃんからのお願いなんだから。樹々が友達と毎日遊んで笑顔を見せてくれれば、あたしも自然と笑顔になるから。今まで遊んだことなかったんだし、高校生だからいっぱい遊んでいろ!』ってお姉ちゃん言っていた。

だから似たような言葉を聞いたあたしは、胸が締め付けられるように苦しく感じる。
ホント、どんな顔したらいいのだろうか。

それすらよく分からない。

「さっ、早く脱いで。じゃないとお会計出来ないでしょ?」

その言葉と共に、杏子さんは試着室のカーテンを締めた。
『全く素直じゃないわね』って、杏子さんの呆れた声がカーテン越しに聞こえる。

・・・・・・・・。

一方のあたしは、『誰もあたしを見ていない』と思った瞬間から涙が溢れだした。

まだ買ってもいない商品に涙が染みるほど、『あたしは泣くことしか出来ないのか』って、バカなあたしは自分を責めた。

『ありがとうございます』って言えたらいいけど、今のあたしにはそれすら言えないし。

本当に情けない・・・・。

それにあの二人は本当にズルい。

なんでいつもあたしに暖かく接してくれるのかな?
血も繋がっていないし、家族でもないのに。

ホント、意味がわからないよ・・・・・。