東雲さんが運転する車を走らせて約二時間。

着いた場所は、全く自然を感じさせない人で溢れ返る都会の街だった。
あたし達の住む街と全然違うから、なんだか知らない世界に来てしまった気分。

街は歩く人でいっぱいで、建物も大きな建造物が多い。
まるでテレビでしか見たことのない光景に、あたしは興奮していた。

それに何だか未来に来たような気分だ。
同じ世界のはずなのに、空気が全然違う気がする。

パーキングに車を止めたあたし達は、『昼ご飯まで自由行動ね』と言う杏子さんの言葉を界に、二つの班に分かれた。

一つは東雲さんと瑞季と向日葵のグループ。
もう一つは、あたしと杏子さんのシロさんのグループ・・・・・・。

そんな突然振り分けられたグルーブ分けに、あたしは肩を落とす。
『よりによって、どうしてこの二人なんだ』と心の中で呟く。

だって何されるかわからないし。
二人の考えていることにはついていけないし。

そしてあたし達が向かったのは、巨大なビルの中にある洋服屋だった。
値段なんて見たくないほどの、とても高そうなお店。

高そうなお店だから、あたしはお店の入ることをためらった。
同時に店の入り口付近にある大きな上木鉢に隠れながら、あたしはため息を吐いた。

『あたし、どうしてこんなところにいるのだろう』って思ったりもした。

一方で店内の中では、お洒落な洋服を片手に杏子さんとシロさんは笑顔を浮かべていた。
仲良くする二人の姿は見ていて何だか羨ましい。

あたしは桔梗お姉ちゃんとまだそこまで仲良くないと思うし。
あまり桔梗お姉ちゃんと遊んだことないし。

そういえば杏子さんとシロさんの二人の年は『十四歳も離れている』と聞いたことがある。
シロさんが今年で二十六歳なら、杏子さんは四十歳と言った所だろうか。

まるで二十代後半に見える杏子さんのその容姿は、とても中学生と小学生の母親には見えない。
シロさんとあまり歳は変わらなそうに見えるし。

杏子さんの職業が何なのか、あたしは知らない。
食事は旦那の東雲さんが作っているし、とても専業主婦とは思えない。

よく外出していると瑞季から聞くし。

その杏子さんの声が店内から聞こえた。
あたしは振り返ると、杏子さんがあたしを睨み付けている。