シロさんの車は大きく、最大八人乗り。
そして乗って早々に助手席に座る杏子さんは『煙草臭い』と怒りだす。

後部座席に座るシロさんは昨日から苛立ちが収まらないのか、未だに杏子さんと口喧嘩をしていた。
本当に仲のいい姉妹だと改めて思う。

その二人の会話を聞きながら運転席に座る東雲さんは、苦笑いを浮かべてエンジンをかけてた。

車の運転も凄く上手だ。

瑞季は一番後ろの後部座席に一人で座り読書を楽しんでいた。
酔わないのかな?

あたしは向日葵の話に何度も頷きながら、たまにシロさんに理不尽に首を閉められるなど散々な目にあった。
と言うか、苦しいからやめてほしい・・・・・。

あたしのお姉ちゃんはここにはいない。
お姉ちゃんも誘ったけど、どうしても休めないバイトが入っているみたいだ。

何だか本当に申し訳ない。
帰るときにお土産を買っていこう。

その大きな車の小さな空間は、まるで本当の家族のようにあたしは感じた。
とても暖かい、普通の家庭。

でもさ、これが普通なんだよね。
別に若槻家が『特別仲のいい家族』じゃないんだよね?

・・・・・・・。

家族の愛を途中で失ったあたしには、居心地が悪過ぎる。