そうやって、いつの間にか言葉を失うあたしに、電話越しの杏子さんの声が聞こえる。相変わらず怒った声だ。
「ちょっと、樹々ちゃん?聞いているかな?」
「あっ、はい。聞こえてます!えっと、はい」
杏子さんからため息を吐く声が聞こえた。
どうやらあたしの考えていることはすべてお見通しみたいだ。
「今の私の言葉で、昔の事を思い出したんでしょ?あなたの考えている事なんて全部丸わかりなんだからね。わかってるの?」
言い当てられてまたあたしは何も言い返せなかった。
伝わらないが電話越しの杏子さんに、あたしは何度も頷いていた。
いつもそうだ。
杏子さんが見えているもの、そんなの範囲が広すぎてあたしにはわからない。
そして平気な顔をしてあたしの思考も覗いてくる。
あたしが辛い時は、いつも声を掛けてくれる。
そんな杏子さんには嘘は通用しない。
まるで本当のお母さんのように、簡単に嘘を見抜いてくる。
変な仕草とか見せているのかな?
あたし。
杏子さんはあたしに説教してくれる。
「『親に甘えていい』っていったのは私達の事。何度も言っているでしょ?『杏子お母さんに頼りなさい』って」
それは杏子さんから何度も言われていた言葉だ。
初めて出会った日から言われ続けられている言葉。
だけど、そんなこと簡単に納得してしまう訳にはいかない。
納得したら、杏子さんに迷惑がかかってしまうだけだ。
そもそも血なんて繋がってないし・・・・。
「えっと、でも」
直後に聞こえるのは、鼓膜が破れそうな杏子さんの大きな声。
「でもじゃない!っていうか、もう養子にいれちゃうわよ!」
「そんなこと言われても・・・・」
その時、杏子さんから大きなため息を吐くような声が聞こえた。
まるで『言うことの聞かない娘だ』と言うようなため息。
杏子さんの声は、突然落ち着く。
「親として命令です。今度日曜日、家族で一緒に遊びに行くわよ」
あまりにも強引な言葉に、あたしは戸惑った。
なんて言葉を返したら良いのか、本当に分からない。
だけどメッセージだけではなく、電話までしてくるくらいだ。
よっぽど気を使われているみたい。
それを断ったら、それこそ申し訳ない気もする。
だからあたしは嘘を付く。
素直じゃない言葉を小さく呟く。
「はい。じゃあ、ご一緒・・・・します」
と言うか、あたしの思考が見えるのだったら『放っておく』という選択肢もあるはずなのに。
人殺しの娘なんて近寄りたくない存在なのに。
どうしてだろう。
どうしてあたしなんかに声をかけてきたのだろうか。
それだけは杏子さんと出会って最大の謎だ。
ホントに意味分からない。
そんな杏子さんにほぼ強引に言わされたあたしだけど、杏子さんの声は上機嫌だった。
「本当?じゃあ朝の八時に私の家に来てね」
杏子さんはそう言って、一方的に通話を切った。
改めて思うけど、何だか振り回されてばっか・・・・。
ホント、シロさんや杏子さんの『滅茶苦茶姉妹』は滅茶苦茶な提案ばっかりしてくる。一体彼女達には何が見えているのだろうか。
あたしにはまだ『松川樹々』が見えないよ・・・・。
「ちょっと、樹々ちゃん?聞いているかな?」
「あっ、はい。聞こえてます!えっと、はい」
杏子さんからため息を吐く声が聞こえた。
どうやらあたしの考えていることはすべてお見通しみたいだ。
「今の私の言葉で、昔の事を思い出したんでしょ?あなたの考えている事なんて全部丸わかりなんだからね。わかってるの?」
言い当てられてまたあたしは何も言い返せなかった。
伝わらないが電話越しの杏子さんに、あたしは何度も頷いていた。
いつもそうだ。
杏子さんが見えているもの、そんなの範囲が広すぎてあたしにはわからない。
そして平気な顔をしてあたしの思考も覗いてくる。
あたしが辛い時は、いつも声を掛けてくれる。
そんな杏子さんには嘘は通用しない。
まるで本当のお母さんのように、簡単に嘘を見抜いてくる。
変な仕草とか見せているのかな?
あたし。
杏子さんはあたしに説教してくれる。
「『親に甘えていい』っていったのは私達の事。何度も言っているでしょ?『杏子お母さんに頼りなさい』って」
それは杏子さんから何度も言われていた言葉だ。
初めて出会った日から言われ続けられている言葉。
だけど、そんなこと簡単に納得してしまう訳にはいかない。
納得したら、杏子さんに迷惑がかかってしまうだけだ。
そもそも血なんて繋がってないし・・・・。
「えっと、でも」
直後に聞こえるのは、鼓膜が破れそうな杏子さんの大きな声。
「でもじゃない!っていうか、もう養子にいれちゃうわよ!」
「そんなこと言われても・・・・」
その時、杏子さんから大きなため息を吐くような声が聞こえた。
まるで『言うことの聞かない娘だ』と言うようなため息。
杏子さんの声は、突然落ち着く。
「親として命令です。今度日曜日、家族で一緒に遊びに行くわよ」
あまりにも強引な言葉に、あたしは戸惑った。
なんて言葉を返したら良いのか、本当に分からない。
だけどメッセージだけではなく、電話までしてくるくらいだ。
よっぽど気を使われているみたい。
それを断ったら、それこそ申し訳ない気もする。
だからあたしは嘘を付く。
素直じゃない言葉を小さく呟く。
「はい。じゃあ、ご一緒・・・・します」
と言うか、あたしの思考が見えるのだったら『放っておく』という選択肢もあるはずなのに。
人殺しの娘なんて近寄りたくない存在なのに。
どうしてだろう。
どうしてあたしなんかに声をかけてきたのだろうか。
それだけは杏子さんと出会って最大の謎だ。
ホントに意味分からない。
そんな杏子さんにほぼ強引に言わされたあたしだけど、杏子さんの声は上機嫌だった。
「本当?じゃあ朝の八時に私の家に来てね」
杏子さんはそう言って、一方的に通話を切った。
改めて思うけど、何だか振り回されてばっか・・・・。
ホント、シロさんや杏子さんの『滅茶苦茶姉妹』は滅茶苦茶な提案ばっかりしてくる。一体彼女達には何が見えているのだろうか。
あたしにはまだ『松川樹々』が見えないよ・・・・。