ルビコン

休み時間になる度にあたしは茜の元へ駆け寄る。
偽りのあたしを茜の前で振る舞いながら、茜があたしを振り向くのを期待していた。

『偽りのあたしが原因なのか?』と少し考えたりもしたけど、あたしは諦めずに茜の前に何度も立ち塞がった。

でもやっぱり茜がすぐに逃げようとするのが現状だった。
なんかムカついてきたかも。

体育のでペアを作るときも、茜は直ぐに紗季のところへ向かった。
運動の出来ない紗季の身体を忘れるほど、彼女は落ち着きがなかった。

紗季はいつも体育は見学しているのに。

結局、取り残された茜とあたしはペアになったけど、茜は何一つ話してくれなかった。全部無視してくるし。

もう絶対に許さない。

一方の紗季は休み時間に茜と色々と話をしていた。
お姉ちゃんのように茜と向き合っていた。

二人で何か話している姿を見かけたが、遠くて何を話しているのかわからなかった。

そして何にも進展はなく、そのまま時間だけが進んだ。

あたしは茜と話せずに放課後を迎えた。

終わりのホームルームではすぐ帰ろうと鞄を握りしめる茜の姿がある。

きっと来た時のように走って逃げるのだろう。
逃げられたら明日までチャンスは回ってこない。

だか手は打ってある。
あたしの力で無理なら誰かに助けてもらう。

昨日という一日だけで、あたしはそう学んだ。
何よりとある性格の悪いお姉さんにお願いしたから、もう大丈夫だろう。

茜の泣きそうな顔が楽しみだ。

そしてホームルームが終わると、案の定茜は逃げるように教室を飛び出す。
あたしの視線を何度も気にしながら・・・・。

一方のあたしは茜を追いかけずに自分の席に座っていた。
そしてすぐに紗季と橙磨さんがあたしの元までやって来て、あたしにニッコリと笑っていた。

まるで、『後は待つだけだ』と言わんばかりの二人の表情。

・・・・・・。

少ししてから茜が教室に戻ってくる。
そして茜は泣きそうな表情で、あたしの元までやって来た。

まるで友達にひどい仕打ちをされたような、可哀想な表情。

ってかあたし、絶対に性格悪いよね・・・・・。