一方であたしの中に数年前の悪夢が蘇る。
よく話していた当時のクラスメイトがあの事件をきっかけに、手のひらを返したように。

あたしの事をいじめようになった出来事のように。

父が起こした殺人事件であたしは酷い目にあった。
大好きだった仲間からも裏切られ、毎日酷いいじめに遇った。

だから何て言うか、『あの日の時と似ているな』って思った。
茜があたしをいじめるあの時のクラスメイトに見えた。

昨日杏子さんがヘタレなあたしの変わりに、松川樹々の過去を茜に話してくれた。
だから茜は、『松川樹々の過去を知ったから、松川樹々のことを嫌っている』のだろうか。

茜はあたしの事を『殺人鬼の娘』だって知ったから、あたしとの関わりを避けてるのだろうか。

だとしたらそれは、自殺したくなるほどの最悪の出来事だ。
今まで積み上げてきた物が全部崩れ落ちゃう。

「茜!」

『それだけは絶対に嫌だ』と、あたしは彼女に声をかける。
近くにいた小鳥が逃げてしまいそうなほど大きなあたしの声だったため、イヤホンを付けている茜も驚いたような反応を見せた。

一方でこちらを振り替えることもなく茜は走った。
それもあたしの方ではなく、学校へ向かって彼女は逃げるように走る。

茜が逃げる理由は何となく分かる。

だけど今は考えたくない。
彼女の口から本音を聞かない限りは、納得しない。

あたしは逃げる茜を追いかける。
茜はあまり運動なんてしたことないのか、逃げるスピードは速くない。

『これならあたしも追い付けるかも』と、あたしは少しの希望を抱いた。

でもあたしは風邪や体調不良の病み上がり。
だからあたしはすぐに息が切れた。

結局差は縮まらない・・・・・。