「お姉ちゃん、今日も今からバイト?」

「うん。流石にもう慣れたし、どうってことないよ」

そんなことを言っているが、お姉ちゃんの表情は今にでも倒れそうなほど疲れている。あり得ないほど痩せて線は細いし。

食料確保は松川家の永遠の課題だが、いくらなんでもお姉ちゃんは食べなさ過ぎる。
幼いときから自分の食べ物をあたしにくれる、心優しいお姉ちゃんだし。

そんな痩せたお姉ちゃんを見て、あたしはさっきの出来事を思い出す。
「杏子さんから晩ご飯頂いたから。お姉ちゃんの分も」

「また?あたしの分はいいっていっているのに」

着替え終わったお姉ちゃんは再び玄関に向かった。
そして靴も履く。

「食べないの?」

「食べる時間がないよ」

「今日は何か食べたの?」

「うーん、昼にコンビニで買ったおにぎり一つだけ」

「それじゃあ倒れちゃうよ!」

「もーわかった、わかった。っていうか『ご飯食べたか?』って、樹々も母さん似てきたね」

そう言ってお姉ちゃんはあたしの頭を撫でた。
昔からこんな言い争いがあれば、お姉ちゃんはいつもあたしの頭を撫でて黙らせようとする。

もう子供じゃないのに。

だけどその唯一の家族の温かさに『懐かしさ』を覚えているあたしは、何も言い返せなかった。
大好きなお母さんの手のひらによく似ていていたからだろうか。

「んじゃ行ってくるね。病人は早く寝てなさいよ、樹々」

だけど『ここで怯んでいたらよくない』ってことは一番あたしが知っている。
今のお姉ちゃんを助けるのは、あたししかいない。

昔、お母さんが言っていた。
『自分の身体を一番理解しているのは、自分ではなく、いつも側にいる誰かだ』って。

・・・・・・。

だったら、あたしがお姉ちゃんを守らないと!