ある日、目が覚めたあたしの前でお母さんは首を吊っていた。
我が子を置いて、母は自らの『人生』と『家族の縁』に終止符を打った。

でもその時は『その選択は正解だった』と、つくづく思わされる。
あの時あたしもお母さんと一緒に死んでおけば、どれだけ幸せだったか。

そしてお母さんが自殺してから、本当の地獄の始まりだった。
お金もないし、身寄りは引き取ってくれない。

人殺しの子孫は、みんなに嫌われる。

そんなお姉ちゃんとあたしは児童養護施設で住むことになった。
でも楽しい日々が待っている訳じゃない。

本当に『地獄』と言う言葉が相応しい日々が待っていた。

相変わらず学校ではいじめられ、施設に帰ってもあたし達はいじめられた。
あたし達が生きることを毎日否定された。

今までだと家に帰ったら、泣き叫ぶあたしを母やお姉ちゃんが慰めてくれた。
お母さんは借金をしてまでも、何度も転校して私を救ってくれた。

でも、今はそれが出来ない。
ただ苦痛に耐えて、全く進まない嫌な時間が過ぎるのを待つだけ。

毎日誰かの声に脅え、まともに食事が喉を通ることもない。

まるで明かりのない真っ暗なトンネルをただ進むだけのようだった。
『出口なんてない』って、分かっているのに。

それがあたしが小学五年生の時のことだ。
毎日死にたいと思った日々のこと。

・・・・・。

だからこそ、さっきのニュースを見て思う。

『あたしはあの通り魔事件の時、『死者』に廻った方が幸せだったのかもしれない』って。

『どうしてお父さんはあたしを殺してくれなかったのだろう』って、何度も思っていた。

お母さんと一緒に死んでいれば、どれだけあたしは幸せだったか。
何度も思った。