階段を上った先にあったのもは、幼稚園児が書いたような『ききのへや』と黄色のクレヨンで書かれたボードが部屋の扉にぶら下がっている。

その文字を見ると、どうやらここが樹々の部屋みたいだ。
テレビの音もこの先から聞こえる。

そして『この先に樹々は居るのだろうか』と思うと同時に、なんて表情をして入ったらいいのか分からないもどかしさで、ゆっくり開けた扉の向こう側。

夏の日差しが部屋に入り込み、一瞬だけ光で視界が真っ白になった。

どうやらこの部屋だけは雨戸は閉めていないみたいだ。
理由はこの部屋には住人が居るから。

その部屋には愉快な音楽が流れるテレビと小さなテーブル。
壁には私が着ているのと同じ制服がぶら下がっていた。

他には布団しかない女の子とは思えない寂しい部屋。

その布団には顔を真っ赤に腫らしたような、辛そうな表情の松川樹々が寝ていた。
頭には氷水が当てられて、夏だと言うのに厚着で寝ている。

「樹々?」

思わず彼女の名前を呼んでしまったが、返事はない。

でもその私の声に反応したのか、私の後ろから知らない女の人の声が聞こえた。

誰かに似たような、ハキハキした女性の声。

「誰?」

『やってしまった』と私は背後を振り返る。
そして慌てて目の前の女性から目を逸らし、言い訳を述べた。

「ああ!ごめんなさい!えっと、怪しいものじゃない、です・・・。樹々が心配で」

「あら、もしかして茜ちゃん」

「へっ?」

私はゆっくり顔を上げる。

その先には綺麗な黒髪のロングヘアが印象的な女性が立っていた。
二十代後半にも見える若そうな人だが、樹々の母なのだろうか。

でも全然似てない。
樹々に似ていると言うよりは城崎さんに似ている気がする。 

目の前の彼女は笑う。

「やっぱりそうよね。樹々ちゃんや美憂(ミユウ)から聞いているわよ。ウワサのピアニストちゃん」

「美憂って、えっと・・・・・」

誰だろう?
そんな人、私の身の回りに居たっけ?

「そっか、あなた達には『シロさん』って言った方が伝わりやすいか」

ここで城崎さんの名前が出てきたことに私は驚いた。
でも確か『城崎さんには年の離れたお姉さんがいる』って聞いたことがあるし。

私は思い切って聞いてみる。

「もしかして、城崎さんのお姉さんですか?」

目の前の女性は答える。

「そう。その城崎さんの姉の若槻杏子(ワカツキ キョウコ)。初めてまして、だよね?茜ちゃん」

「は、はい!」

緊張した私は声が裏返ってしまった。

「あはは。そんなに固くならなくていいわよ。美憂と一緒で人見知りが激しいわね」

杏子さんの笑顔は城崎さんがよく見せる笑顔と酷似していた。
まるで城崎さんが黒髪のウィッグを被ったみたいだ。

歳が離れているはずなのに、まるで双子のように見える。

そんな杏子さんに、私は思わずまた目を逸らしてしまった。
私の視線の先は杏子さんの持つ樹々の着替えの服。

杏子さんは続ける。