「知らない方が良かったって思う時ってある?」

その質問を理解するのに私は時間がかかった。
でも質問を理解しても、その質問の本質はいくら考えてもわからない。

だから私は慌てて言葉を組み立てる。

と言うか紗季いきなり何?
どうしたの?

「えっと、でも正直わからないかも。まだそんなことを思った記憶ないって言うか」

その答えで紗季は満足したのか、再び私に笑みを見せた。

「そう。ありがとうね」

私は首を傾げながらゴミ箱へゴミを捨てるとまた座っていた席に戻ろうとする。
その時、私は思わず足を止めてしまった。

どうしたんだろう紗季、一体何があったのだろうか?
その闇に染まったような怖い表情。

紗季は私の知らない樹々の正体を知っているのだろうか。

・・・・・・。

考えれば考えるほど不安になるから、私は樹々のことも紗季のことも考えることを止めた。

同時にその紗季の言葉の意味、なんとなくだけど今ならわかった気がする。

と言うか知りたくないよね。
大切な人の『死にたい』と思った過去なんて・・・・。