「茜ちゃんは少し考えすぎ。お互いの事を知らなくても、側に居てくれるだけでいいじゃん。私は茜ちゃんのこと大好きだし、心の底から信用ているよ。それに過去とか周りの関係とか関係無い。だって茜ちゃん見ていたら分かるもん。嘘の下手くそな、素直な優しい子。それだけで茜ちゃんの事を信用したいって思うよ。普通の人なら」

まるで私の心を読んだ紗季の言葉に私は思わず目を逸らした。
同い年なのに、まるで人生の先輩のようなお姉ちゃんような紗季の言葉。

この子には一体何が見えるのだろうか。
何を経験してきたのだろうか。

「うん」

力弱い小さな私の声に紗季は再び笑った。

「でも私も気になるのは事実。私も今の樹々ちゃんが心配だし。いっそうのこと、樹々ちゃんの家に行ってみたら?」

その紗季の提案に、私は戸惑った。

「えっでも。私、樹々の家に行ったことないし、場所分からないんだけど」

本当だ。
二人で遊ぶ時は私の家か外出しか選択肢はない。

樹々は私の家の近くに住んでいる。
それしか樹々の家のことは知らないし、どこにあるかすら分からない。

そんな私には紗季は提案する。
「先生に聞いたら、教えてくれるんじゃないかな?事情も気になるし」

「じゃあ、紗季も樹々の家に来てくれる?」

私の言葉に紗季は驚いた表情を見せた。
ってかなんで驚くの?

「うーん、行きたいけど両親帰ってくるの遅いし。小緑の晩ご飯も作らないといけないし」

小緑(コノリ)。
紗季の妹の名前だ。

「そっか、だったら仕方ないか」

私は納得すると同時に肩を落とす。
仲間が居てくれたら心強いと思ったけど、やっぱり世の中甘くない。

昼食を食べ終えた私は、パンが入っていたビニール袋を捨てようと立ち上がってゴミ箱へ向かう。
何だか腰が重く感じるのは気のせいだろうか。

「ねぇ、茜ちゃん」

「ん?」

私は紗季の方を振り返る。
紗季の表情は曇っていた。