「そ、そんなことはない!春茶先生は会ったことがあるって言ってたもん!」

父は笑って答える。

「茜、お前最近変わってきたんだって?友達とよく遊ぶようになったって朱羽からよく聞くぞ。それで疲れているんじゃないのか?二次元と三次元の違いが分からなくなったんじゃないか?」

二次元と三次元の違い?

・・・・は?

「そんなことはない!」

そう言い返しても父は笑っていた。
兄も少し呆れたような表情。

ってなにこれ?
何て言うか悔しい。

悔しい気持ちは何度も経験してきたけど、こんな気持ちは初めてだ。

バカにされたような、舐められたような。
怒りとは違う何か。

私、漫画やドラマのような空想の話をしていたの?

ってかじゃあなんで、父は何年前もの飛行機墜落事故の事を話したの?
その時、『宮崎紅』ってお父さんも言ったはずなのに。

・・・・・・・・・。

頭痛くなってきた。

もう意味わかんない。

「あー、冷酒飲も」

携帯電話を置いて兄は立ち上がると冷蔵庫に向かう。
父のために買ってきたと思われる冷酒のボトルを持ってきた。

「なんだ朱羽珍しいな。お前日本酒飲めるようになったのか?」

「潰されそうな程飲まされたら耐性つくぞ。今なら何でも飲める」

「ほうーよく言ったな。だったら父さんも付き合おうかな」

「ってか父さんの為に買っていた酒だし」

父も兄と同様に残りのビールを全て飲み干すと立ち上がり冷蔵庫に向かう。
そして予め冷やしておいたグラスを持ってきた。

お父さん日本酒が大好きだっけ。

ここからは大人の時間だと私は理解する。
未成年の私は出ていった方がいいのだろう。

まだ料理は大量に残っているが、お腹がいっぱいだった。
それになんか元気なくなった。

「ごちそうさま」

私は立ち上がると自分の食器を台所まで持って自分で洗う。
そして何事もなく去ろうと私は荷物を持ってリビングを出ようとした。

自分の部屋に向かおうとする。

けど・・・・・。

「あっ、こら茜!」

突然兄に呼ばれて私は驚いた。
元気のない私は睨み付けるように兄に言葉を返す。

「なに?」

「忘れ物。ちょっと待って!」

そう言って兄は慌てて冷蔵庫に向かう。
けど、今はそんなのいい。

そう思って私は兄の言葉を無視しようとリビングを出ようとしたが、戻ってきた兄に腕を掴まれる。

「待てって言うてるだろうが」

「えっ!?」

私は目を丸めた。
いつの間にか、私の両手には大きなシュークリーム。

とても重たい。

って・・・・え?