「『怒られてもずっと三人でいたらどうってことないだろ?だったら、子供の内はずっと三人で一緒に居ようぜ』って。まさか忘れたのかよ」

正直言って、まだ思い出してもいない。

だけど代わりに柴田愛藍という昔の親友について私は思い出した。

彼はルールは守らない人間だが約束にはうるさかった。
どんな小さな約束でも、愛藍はは破った事がない。

休み時間に『毎日腹筋する』って約束したら、愛藍は教室の隅で毎日腹筋をしていたこともあったっけ。

冗談で話していたのに、愛藍は本気だった。
理由もなく適当に言った約束なのに。

だから私は念のために問い掛ける。
その約束を完全に覚えていない私は、申し訳なさがこみ上げて来る・・・・・。

「そんな古い約束なんかのために?」

私は言葉を間違えたのか、愛藍は怒った表情で私に声を張る。

「『なんか』ってなんだよ!俺ら三人からしたら、命よりも大事な約束だぞ!って茜?おい!・・・・またかよ!」

私も言われるまで気づかなかった。
視界がどんどんボヤけていくと同時に、私は大粒の涙を流していた。

そして涙は膝の上に乗っていた子猫に当たり、子猫は驚いて逃げてしまった。

愛藍は続ける。

「お前、そんなに泣き虫だったのかよ?強がっていたあの頃はどこに行った?」

強がっていた?

・・・・・・・。

強がってなんか、ないよ。

「うるさい」

そう言って愛藍の言葉を否定したその時、私の中で何かが崩れていく気がした。
土台を失った建物ように、見事に崩れていく。

それはきっと、今まで積み上げてきたもの。
沢山表で泣いて、裏で蓄えてきたもの。

もう多少は悩まなくていいのかな。
それとも・・・・・・。

・・・・・・。 

分からない。
もう、何が何だか分からなかった。

でもたった一つ、わかったことがある。
今日七年越しにわかったことが一つある。

それは、愛藍はずっと『私の味方だった』ってこと。
私が愛藍を想うように、愛藍も私のことを想っていたこと。

それがすごく嬉しかった。
心の底から嬉しかった。

それだけで、すごく前進できた気がする。

あの頃の関係に少し戻れた気がする・・・・・。