「俺、お前のことが好きだったんだよ!もちろん葵も。一緒に居たんだったら気付けよ!」

・・・・・・・・。

えっと・・・・・・はい?

・・・・・・え?

「へっ?」

それが小学生時代に上級生と喧嘩をしていた理由だと納得するのに。
人生で初めての告白だと理解するのに、私はかなりの時間がかかった。

そして混乱と同時に、昔のの記憶が蘇る。そういえば私が他の男の子と少しでも会話しようとしたら、愛藍と葵が血相変えて私の元へやって来たっけ。

何故だかその男の子にずっと敵意を送っていたし。

「全部言わせやがって。本当に茜は理解するのに時間のかかるやつだな」

「で、でも」

言葉が上手く出てこなかった。
何を反論しようとしたのかすら忘れてしまって混乱する。

私は愛藍から目を逸らすと、そこには茶色い子猫が私の表情を伺っていた。
そして小さな声で鳴くと、私の膝の上に猫は座っていた。

愛藍もその猫を見て、私に問い掛ける。

「なあ茜。その傷、俺が癒すことは出来ないだろうが?」

もう何も言葉が出てこなかった。
頭の中が真っ白で、目の前の少年が柴田愛藍ということすら忘れそうだった。

愛藍は続ける。

「茜が草太のお母さんに訴えていた時、俺実はものすごく苦しかった。なんか、槍が体に刺さったみたいだった。『お前が毎日、そんな思いで生きていた』って改め知ったし。わかっていたけど、『ただ茜を酷い思いをさせることしか出来ない』って思ったら、自分の存在が許せないっていうか。何としても『茜を幸せにさせたい』って思ったし」

その言葉は愛藍が言うように、槍のように私の体に突き刺さる。

理由は、一つの疑問が生まれたから。

「どうして、そこまでしてくれるの?」

私の言葉に愛藍は惚けたような顔を見せた。
何て言うか、私を馬鹿にしているような表情。

「どうしてって言われても、約束したからとしか言いようがねぇよ」

「約束?」

私は首を傾げると、愛藍はまた怒りだす。
色んな表情を見せて本当に忙しい奴だ。

「はぁ?忘れたのかよ小三の時の遠足の日の事。集合時間無視して遊んでいたことあっただろ? お前『先生に怒られるからみんなの所に戻ろう』って反対していたけど、葵の言葉に納得していたじゃねぇか」

「葵の言葉?」

思い出せない。

そもそも小三の遠足?
どこに行ったんだっけ。

そうやって考える私を見た愛藍は大きなため息を吐くと、肩を落とした。
呆れたやつだと、その彼の表情が物語っている。

同時に愛藍はその約束を思い出させてくれる。