「お前、上級生からモテてたんだよ。チビのくせに大人っぽいっていうか。だから喧嘩する相手の中に好きな女がいたら、誰だって手を出すことなんて出来ねぇだろうがよ!」

私は思わず笑ってしまった。
『何?そのふざけた理由』って。

思い付きの言葉とあってか、『言葉選びが下手くそ過ぎないかな?』って。

「そんなふざけた理由あるわけないじゃん。何言ってるのさ!」

その私の言葉の直後、再び愛藍の顔が赤くなった。

それもさっきよりも深刻だ。
私に嘘の言葉だと見抜かれて、恥ずかしいのだろうか。

そんな愛藍もまた私に反論する。

「嘘じゃねぇよ!気付けよこのアホ!」

「アホ?ってか私の事が好きな奴とか放っといたらいいじゃん。もしそうだったとしても、私が断ったら良かったじゃん!」

元々恋愛に全くと言ってもいいほど興味のない私だ。
それは今も変わらない。

それに知らない人だったら、了承する理由がない。
それくらい愛藍にもわかるはずだ。

わかるハズなのに・・・・。

・・・・・。

「好きな女が取られるかもしれないっていうのに、黙って見ておくわけにはいかねぇだろバカ野郎!」

その力強い愛藍の言葉に、私は戸惑った。
そして理解できなかった。

「えっと、・・・・・どいうこと?」

私の声に、愛藍は舌打ち。
そして更に表情が赤くなっていた。

ってかさっきからどうしたの愛藍?

「てめぇは性悪か?頭おかしいのか?どっちだ?」

でもその愛藍の挑発に、私の脳内でゴングの音が鳴った気がした。

今まではただの前哨戦。
ここからがリング上の戦いなんだと、理解した。

だから私は拳を作る。

「うっさいな!馬鹿愛藍め!」

愛藍の生意気な表情と根性。
そこだけは昔から変わっていない。

嫌いじゃないけど、いざ敵になると本当に腹が立つ。

だから私は拳を作って、その生意気な表情目掛けて腕を振り抜こうとした。
私もやる時はやるんだって、愛藍に見せつけてやりたかったけど・・・・・。

愛藍から見たら、私の拳は可愛らしい弱いパンチ。
意図も簡単に、私の魂のこもった拳は愛藍の手のひらで止められた。

私の拳ごと、優しく掴む愛藍。

そして愛藍はその手を離さなかった。
同時にまた顔が真っ赤に染めて、愛藍は私に訴える。

『もう一つの七年越しの想い』を私にぶつけて来る。