「お疲れさま。一応、チケット見せてくれる?」

「はい。江島葵です」

城崎さんは男の子からチケットを確認すると、予約リストのボードに貼られた用紙とチケットに印を付ける。

私達のようなチケットを持った人は、飲み放題やケーキが一つ無料になるなど特典が付くみたいだがら、店長の城崎さんは慎重に確認する。

「行こっか茜」

いつの間にか小さく震える私の手を樹々は引っ張る。
同時に樹々も私の異変に気がついたみたいだ・・・・。

「茜?大丈夫?」

私は知らない間に、頭を押さえていた。
酷い頭痛がいつの間にか私を襲って、意識が朦朧とする。

それと私の心の鍵が開く音が聞こえた。
私の心の底に眠る、真っ黒な悪夢のような日々が詰まった箱が、開こうとしている。

何度も『死にたい』と思った、あの頃の悪夢のような出来事が再び始まろうとしている。

・・・・・・。

「ちょっと!茜!」

樹々の言葉を無視して、私の腕を握る樹々の手を振り払う。

そして逃げるように店内から慌てて飛び出した。
今にも吐きそうな気持ち抑えて、ただただ闇に染まった夜空の下を走り出す。

向かった先は、わからない・・・・。

この先の記憶はほとんど覚えていない・・・・・・。

・・・・・・・。