ルビコン

暗い人生。
それは周囲との会話を避けて、いつも一人で過ごす人生のことだと私は思う。

そして『一人の方がいい』と自分に言い聞かせているが、心はそんなことを一切思ったことはない。

『誰かと一緒にいた方がいい』って心からそう願っているのに。
嘘ついても誰も助けてくれないのに。

懐かしいな。
それ、私の中学時代だ。

その中学生時代を一言で言うと、ただ辛かっただけ。
何度も生きて行くのか辛いと思った三年間の学校生活だった。

そして目の前の少年もまた、私と一緒の道を歩むのだろう。
生きていくのが辛くなるんだろう。

・・・・・・・。

違う、そうじゃない。
そう考えるんじゃない。

物事を反対に考えよう。
マイナスなイメージじゃくて、プラスのイメージを持って。

ここでいじめを止めたら、『もう彼はいじめられることない』って。
強引かな?
でも『いじめを止めよう』と思わない限りは、絶対にいじめは終わらない。

もちろん私のように保健室登校で逃げてもいい。
だけどいじめに対して逃げようと思わない限りは、絶対にいじめから逃げられない。

『保健室』や『転校』という逃げ道にも思考は辿り着かない。

もし私が手を差し出す事が出来るなら、そのキッカケを作ることが出来なら、私は何だってする。

こんな辛い思いをするのは、私一人で充分だ。

私は走った。
その少年に向かってただ走る。

もうすぐ終わる夏休み。
まだ高校三年生だというのに、初めて夏休みに走ったかも。

そして叫ぶ。

「ちょっと!嫌がってるから止めてよ!」

ここで少年が助かるなら、私が代わりに殴られてもいい。
どんな言葉だって受け止めるこの子が助かるなら、なんだってやる。

それにいじめられる辛さを私は知っている。
その辛さを『他人事のように見ること』だけは絶対にしたくない。

だって、辛い思いをするのは、私だけで充分じゃん。
『なんで生まれてきたの?辛い思いをするために生まれてきたの?』って、私は思う。

だから私は大きな体格の男の子を止めようと、必死に彼らの中間に入った。
目の前の悪ガキに立ち向かうように。

「なんだよテメェは!コイツのなんだよ!テメェもコイツのようにら殴られてぇのか?」

でも小学生とは思えないほどの気の強さに、私は思わず怯んでしまった。
あの頃の愛藍に似ていたからだろうか。

それでも私は負けない。
目の前の少年に負けないように私も声を張る。

「その子、嫌がっているから!止めてって、聞こえたから!」

お願いだから、誰かが傷付く行動は止めて。
ただそれだけを祈った。

祈っていたら、腹を殴られた。

「うっせ、外野は引っ込んでろ」

私の腹に激痛が走った。
そして息が出来ない。

もしかして空手でも習っているのだろうか。
最近の小学生ってこんなに力が強いのだろうか。

膝まつく私は体に力が入らない。
言葉も出てこない。

小学生相手に、高校三年生の私は見下されているだけ。
なんか情けないな、私。