初めて食べた天津飯は特別な味がした。
初めてがおもしろいおじいさんが作った天津飯で、愛藍と初めての外食。

そしてそれが何もかもが『特別』な気がして、言葉では表せないほど本当に美味しいかった。

ただ火傷しそうなほど餡は熱い。
下を少し火傷してしまって、涙が出た。

ホント、熱いのは苦手だ・・・。
勘弁してほしい・・・・。

「お前さん、名は?」

密かに舌を火傷した私は、ゆっくり水を飲む。
そしていつも通り、緊張しながら私はおじいさんの言葉に答えた。

「く、桑原・・・・茜です」

そう答えると、ずっと強張っていたおじいさんの表情が緩んだ気がした。
正直言って、さっきと変わっていないはずなのに。

そんなおじいさんは、私を温かい言葉で包んでくれる。

「いつでも来なさい。次はワシの奢りだ。そしてその時は友達も連れてきなさい。事情はしらんが、飯はそんな泣きそうな顔で食うもんじゃねぇぞ」

うう・・・・・。
やっぱりバレていたか。私の心境。

愛藍やおじいさんの会話が楽しいのも事実。
ご飯が美味しくて、油断をすると笑顔になりそうなのも事実。

だけど、泣きそうな自分がいるのも事実だ、なんで泣きそうなのかわからないから、バレないようにしていた。

ホントにもうわけがわからない・・・・・。

そう投げやり思いながら、私は残りの天津飯を完食した。

本当に美味しい。