昔の私は愛藍と葵のやり取りが面白くてただ笑っていた。
二人の言っていることや行動がおもしろ可笑しくて、私も笑い続けた。

無愛想だと言われていたけど、楽しい時は私もずっと笑っていたっけ。

でも、今はそれが出来ない。
目の前の男の子は私の親友の柴田愛藍なのに、私は笑うことが出来ない。

同時に私は思う。
『何もかもあの楽しかった日のまま。そして昔の私に巻き戻すことが出来たら、何も悩まなくて私は幸せだったのかな』って。

・・・・・・・。

だったら、戻りたいな。

愛藍と葵と過ごした懐かしい日々に。

でも昔の自分は好きじゃない。
友達の樹々や紗季と出会って出来た、今の桑原茜のままで昔の自分に戻りたい。

・・・・・・。

やっぱりワガママだよね、私。
そう思うなら行動したらいいのに。

何もしないなんて、本当にバカみたい・・・・・・。

本当にバカだ、私・・・・。

「おう、食わねぇのか?」

「えっ?」

愛藍の言葉で、私は目の前の料理を再び確認する。

見た目はなんでもない天津飯だ。
白い湯気が立つほどの熱さに、私は思わず息を呑んだ。

ただの猫舌だというのに。

同時に私は気が付く。
隣の食べかけの愛藍の天津飯にはにグリーンピースが乗っている。

でも私にはグリーンピースが乗っていない。

・・・・・・・。

ああ、そうだ。
小学生の給食時間、私がグリーンピースを教室の窓から外に弾いていたの、愛藍は覚えてくれていたんだ。

『桑原茜がグリーンピースを食べれない』って、七年前のことを。

なんでそんなどうでもいいこと覚えているんだろう。
私なんか、愛藍の関係すら忘れようとしていたのに。

彼にとって、今の桑原茜はどんな存在なんだんだろうか。

それとどうして私に声を掛けてくれたんだろう。
なんで一緒にご飯を食べてくるんだろう。

お腹は空いている。
朝から何も食べていないし、昨夜もお腹の調子が悪くて何も食べていないから、約一日ぶりの食事だ。

そういえば昨日の昼御飯、何食べたっけ?

そんなことを考えながら、私は白いレンゲでで天津飯を一口すくってみる。

とろけるような卵の下のご飯はチャーハンで、海老や小さく切った野菜が入っている。その中にもグリーンピースは入っていない。

正直言って、天津飯と言う料理を初めて食べるかも。

いや、この場合は『天津炒飯』になるのかな?
まあどっちでもいっか。