街を焼き尽くすかのような相変わらずの夏の暑さに、私の苛立ちは収まらない。

何が一足早い秋の特集だ。
こんな時期に、『涼しくなる日に備えて、久しぶりの鍋はどうですか?』とか『大人を見せるこのセーター。今年の秋はこれで決まり!』なんて寝言を言っている馬鹿げた出演者。

まだ蝉の鳴き声も収まっていないのに、よくそんな特集なんか組めたものだ。
そのふざけた特集なんかより、『いつになったら秋の涼しさが訪れるのか』、教えてもらいたいものだ。

本当に腹が立つ。

私は普段乗らない電車に揺られて十五分。
向かった先は、隣町の楽器屋さんだ。

ここは小さな店だが品揃えは凄い。
中でもピアノの楽譜に力を入れているらしく、楽譜の数は凄い。

初心者向けから、上級者向け。有名な海外の作曲家の曲や、あまり知られていない曲のピアノ楽譜が売られている。

もちろん私の大好きなイタリア出身の作曲家『K・K』の楽譜も売っている。
本来はイタリアでしか取り扱っていないはずなのに。

ホント凄い。
でも正直言って、熱狂的ファンである私でも、その『K・K』がどんな人か知らない。

活動名である『K・K』の名前と出身地以外は全て非公開。
謎に包まれた作曲家だ。

ドラマやゲームの音楽に使われたり、知名度は高い方なのだが、正直言って生きているのかすらわからない。
まるで物語にだけ登場する架空の人物なのかもしれない。

その『K・K』のコーナーの隣は様々なCDが並んでいた。
ピアニストのアルバムを集めたコーナーのようだ。

私の知っているピアニスト『大石春茶(オオイシ ハルチャ)』と書かれた春茶先生の現役時代の曲があった。

他にもピアニスト柴田アランの母である柴田藤子(シバタ フジコ)が演奏した曲や、『横山昆』と言う、あまり聞いたことのない人のアルバムが並んでいる。
それ以外にも日本で有名なピアニストのCDが並んでいる。

ってか『昆』ってなんて読むんだろう?
コンブ?

・・・・んん?
ちなみ柴田アランはまだCDデビューをしていないので、彼のコーナーはなかった。
でも確か、この秋に初めてのアルバムを出すとか。

彼の豪快な演奏が好きだから、購入予約でもしておこうかな。
もうレジで予約出来るみたいだし。

でもそのピアニストコーナで一際目立ったのは、一人の女性ピアニストだった。
名前は宮崎紅(ミヤザキ コウ)。